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経営者の器以上に会社は大きくならない

[要旨]

会社にとって「悪い情報」は、できるだけ早く対処することが求められています。しかし、従業員は、経営者の機嫌が悪くなることを恐れて、それを伝えることを躊躇することがあります。したがって、そのようなことが起きないよう、経営者は、悪い情報が伝えられた時に、そのことを評価できるようにしなければなりません。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「今までの経営書には書いていない新しい経営の教科書」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、経営者の方は、一所懸命に仕事に臨んでいる従業員の足を引っ張る不満分子がいる場合、会社を移ってもらうなどの対処を、責任をもって行わなければならないということを説明しました。これに続いて、岩田さんは、経営者の人間力の重要性について述べておられます。

「結局のところ、経営者に何より求められるのは、『人間力』です。『経営者の器以上に、企業は大きくならない』という言葉は、経営者にとって肝に銘じて噛み締めるべき言葉です。(中略)(経営者の器でもある)人間力が足りないと、『悪い情報』の扱いを誤ります。人間誰しも、自分に都合の悪い話は聞きたくありません。(中略)しかし、経営の現場では、そんなわけにはいきません。(中略)厄介なことに、『悪い情報』の方が、いい情報よりはるかに対処が難しく、スピード感が求められるものです。(中略)端的に言えば、『悪い情報』こそ、早く、トップに上げてもらわなければいけない。(中略)

(一方で)従業員も人間です。経営トップができれば聞きたくない。『悪い情報』は、できるだけ伝えたくない、ましてや、『悪い情報』を話したときに、経営者が不機嫌になったり、声を荒げたり、罵倒を始めたりしたら、なおさらです。『悪い情報』が上がってきたとき、『よくぞ言ってくれた』と言えるかどうか、いつも遠慮なく経営トップに報告できる、という空気を醸し出せるかどうか、それが問われるのです。(中略)トヨタグループでは、悪い報告が上がってくると、上司は必ず『ありがとう!』とお礼を言うことになっていると聞きました」(220ページ)

岩田さんが述べておられる、「経営者の器以上に会社は大きくならない」、「悪い情報ほど重要」ということは、特に真新しいものではありません。ところが、今でも、不祥事はなくなりません。日本の会社は、会社法で内部統制体制の整備が義務付けられており、その効果は発揮されているものの、残念ながら、それでも不祥事を完全に防ぐことはできない状況が現実のようです。すなわち、どうすれば不祥事を防ぐことができるのかという問題には、決め手となる回答はなく、最終的には、「経営者の器」に帰結するのだと、私は考えています。したがって、経営者の方は、その重責を果たすことに最大限の力を注がなければならないのだと思います。

2023/6/10 No.2369

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