KPIはミッションに紐づいた目標
[要旨]
優れたリーダーは、まず、ミッションにヒモづいた明確な目標設定を行い、各部門、各従業員に、(1)責任範囲、(2)求められるパフォーマンス、(3)業績の評価基準を理解してもらいます。こうすることで、事業活動が効率的になり、業績が向上することにつながります。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、一般的に、組織は悪いニュースを隠ぺいするためなら、時には社会倫理さえ犯す危険性があるので、リーダーは、意識的に声を上げることが、とても大切であることを、組織に徹底すべきであり、何でも言える風通しの良い組織を作っていくことが求められるということについて書きました。
これい続いて、岩田さんは、目標設定の大切さについて述べておられます。「優れたリーダーは、まず、ミッションにヒモづいた明確な目標設定(ビジョン)から始めます。チームメンバーに対して、目標をはっきりさせるためには、次の3つを理解してもらう必要があります。(1)自分が何を求められているのか?(責任範囲)(2)良いパフォーマンスとはどのようなものか?(3)業績の評価基準は何か?個々の目標設定をうまくするためには、リーダーと部下がミーティングを行い、その部下にふさわしい目標をじっくり話し合う必要があります。
お互いに自分の考える目標を伝えることで、合意に達しやすくなります。時間をかけて合意する努力は必要です。もちろん、環境変化や予想外のことが起こります。途中で何度でも軌道修正を行う前提で、ある程度のところで見切り発車することも大切です。また、それぞれの責任範囲を、しっかり決めることも大切です。企業でよくあるのは、損益の責任は誰が負っているのかと、営業部門に聞くと、『それは、値段を決めているマーケティング部門と、原価を管理している製造部門の責任だ』と答えます。
マーケティング部門に聞くと、『利益は販売数量と原価でほぼ決まるので、営業部門と製造部門だ』と答えます。あるいは、店舗レベルで販売員に何をしているのかと聞くと、『我々は、商品を来たお客様に販売しているだけで、売上や損益に責任を持つのは、店長や本社の仕事だ』と答えます。このように、責任の所在が明確ではない場合、各事業部が無責任になり、当事者意識がなくなり、他の事業部に責任を転嫁するようになります。(中略)
目標を決めて、責任範囲が明確になれば、今度は、それを数値化するために、KPI(Key Performance Indicator)指標を決めないといけません。何を以てよいパフォーマンスができたのか、合意しておかなくてはなりません。途中の進捗度合いが分からなければ、修正のしようもありません。このKPIは、ひとつとは限りません。なかなか数値化がしにくい目標もあります。それを代替的に補完できる指標で管理するべきです」(299ページ)
事業活動において、数値目標を与えることに否定的な人もいます。例えば、従業員が5人の会社が、1年間で1億円の売上目標を立てたとき、それを単純に5で割って、1人あたり2,000万円の売上目標を割り当てたとすれば、あまり評価できる目標設定とは言えないでしょう。しかし、目安となる数値がなければ、日々の活動が締まりのないものとなることも事実でしょう。
岩田さんが述べておられる事例にもあるように、もし、目標数値が明確でなければ、自社の利益の責任は誰が負っているのかが曖昧になり、自社の利益目標はなかなか達成されなくなってしまうでしょう。そして、KPIは、達成目標という側面もありますが、各部門(または、各従業員)の役割を明確にするという役割や、会社の利益達成に、各部門(または、各従業員)が、どのように関わるのかを明確にするという役割もあります。すなわち、KPIは目的ではなく、ツールと考えるべきものです。
一方で、岩田さんも述べておられるように、全員が納得できるようなKPIの設定には労力がかかるし、また、最初から完全なKPIを設定することは難しく、実践と検証の繰り返しも必要になります。しかし、より研ぎ澄まされたKPIを設定することができれば、事業活動も効率的になったり、従業員の士気を向上させたりすることが可能になります。したがたって、経営者の方は、時間や労力がかかってでも、より精緻なKPIを設定することを通して、効率的な組織活動を促し、業績を向上させることを目指すことが望ましいと言えます。
2024/4/26 No.2690
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