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野球と同様に仕事にも連係ブレーが必要

[要旨]

アルミ加工メーカーのヒルトップの相談役の山本昌作さんは、野球でダブルプレーを行うときは、コンビネーションと連係プレーが求められますが、これは会社の事業活動にも当てはまると考えており、会社内での連係プレーができるよう、ジョブローテーションを行っているそうです。その結果、多くの会社で起きている営業部門と製造部門の対立というものは、同社では起きていないということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、アルミ加工メーカーのHILLTOP株式会社の相談役の山本昌作さんのご著書、「ディズニー、NASAが認めた遊ぶ鉄工所」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、人間は仕事をするのが嫌いであり、強制や命令がないと働かないととらえる考え方と、人は進んで仕事をしたがるものであり、目標達成のためなら努力を惜しまないととらえる考え方がありますが、山本さんは、後者の考え方に立ち、従業員のモチベーションを高めるべきであり、こうすることで、自ずと生産性が高まると考えているということについて説明しました。

これに続いて、山本さんは、経営者の方は野球チームのような会社づくりを目指すべきであるということについて述べておられます。「『営業部門と製造部門の仲の悪さ』は、どこの会社にもあることです。両者は仕事上、切っても切れない関係ですが、時として深い溝ができ、トラプルが勃発することがあります。対立が起きるのは、相手のことを考えていないからです。

製造:『こんなにクソ安い仕事を取ってきたんか、しかも、こんな短い納期でできるわけないやろ』営業:『そうやけどおまえ、イマドキ、こんなご時世なんやから、安い仕事でもやらなければしゃあないやろう』ですが、ヒルトップには、製造や営業といった部門間の隔たりがありません。ヒルトップに営業と製造の対立がないのは、『ジョプ・ローテーションを行っているので、営業が製造の現場を理解している』、『朝礼や全体ミーディングを行って、何か問題がある場合は、その都度、話し合う』、『垣根のない円形のオフィスや各フロアに設置した通信システムなど、連携プレーを生み出すしくみがある』からです。(中略)

『会社は、野球のチームに似ている』、これが私の持論です。『社長=監督、経営幹部=コーチ、社員=選手』です。そして、お客様が打ったボール(お客様からの発注)を連係ブレーで処理するのが、仕事です。ワンプレーで2つのアウトを奪う『ゲッツー』(ダブルプレー)には、あざやかなコンビネーションと華麗なテクニックがあります。『相手の投げやすい位置に投げる』、『相手の捕りやすい球を投げる』という意識がなければゲッツーは完成しません。仕事にも、コンビネーションと連係ブレーが必要です。

『自分の担当が終われば、それで終わり』、『与えられた業務だけをやればいい』と個人プレーに走るのではなく、『チーム全体』のことを考えて仕事をすることが大切です。『次工程』で仕事をする人の立場と気持ちを想像しながら仕事をする。次の人が仕事をしやすいように考えて仕事をする。その結果、流れるような『5-4-3のダブルプレー』(5…サード、4…セカンド、3…ファースト)が完成するのです」(142ページ)

山本さんが述べておられるように、職場内での部門対立はどうしても起きてしまうようです。私がこれまで事業改善のお手伝いをしてきた会社でも、やはり、営業部門のイニシアティブが大きく、他の部門が委縮している会社もりましたし、管理部門が聖域化し、社長もなかなか口出しできないという会社もありました。その一方で、これも山本さんが述べておられるように、事業活動では野球チームのようなコンビネーションと連係プレーが行われなければならないということも、ほとんどの方がご理解されると思います。

では、なぜ、部門間対立が解消できない会社が多いのかというと、その理由の1つ目は、その負担が大きいと経営者の方が考えて、ジョブ・ローテーションが実施されないからだと思います。しかし、これは、前々回の記事で述べたように、ジョブ・ローテーションを行うことの負担は、会社の競争力を高めるためには避けることはできないものと考えなければなりません。

そして、2つ目の理由は、「自分はデスクワークが苦手なので、営業以外の仕事はしたくない」、「自分は人と接することが苦手なので、間接部門以外の仕事はしたくない」という従業員がいることだと思います。このような従業員に対して、経営者の方が配置転換を打診すると、「異動するのであれば会社を辞める」と拒んだり、中には、あえて仕事を属人化させておいて、「自分が辞めれば会社が困るだろう」という状態にしていたりすることもあり、経営者の方も対処をしかねているということもあると思います。

このような状態に対する解決策の詳細な説明は割愛しますが、基本的には、経営者の方が、自社はジョブローテーションを行うことで人材育成を行い、業績を高めていくという方針を明示し、それを有言実行することだと思います。繰り返しになりますが、経営者の方にとって、これらの働きかけを行うことは、決して容易なことではありません。でも、だからこそ、よい組織をつくることができる経営者の経営する会社は競争力が高くなるということになるのでしょう。したがって、経営者の方たちは、これからは組織づくりについて、より関心を持ってスキルを高めて行くことが求められていると、私は考えています。

2025/1/31 No.2970

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