80%の売上は20%の顧客がもたらす
[要旨]
80%の売上は20%の顧客がもたらすというパレートの法則がありますが、これを活用した顧客の絞り込みは、現在は、効果が高くなってきています。特に、サービス業では、顧客も生産に参加(共創)することになるとともに、どのような人が顧客になっているかは、他の顧客にも大きく影響します。
[本文]
今回も、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、標的顧客を、集団ではなく、さまざまな属性で絞り込んだ、あたかもひとりの顧客像、すなわち、ペルソナを描いて、それを対象とすることが望ましいということを説明しました。これに続いて、鈴木さんは、これとは異なる顧客の絞り込みの方法として、パレートの法則についてご説明しておられます。
「『80対20の法則』ないしは、発見者の名前をとって、『パレートの法則』と呼ばれる経験則があります。これによれば、20%の顧客が80%の売上(実際の数字は多少前後しますが)をもたらすことがわかっています。そうだとすると、この20%の顧客に集中して注力しない手はありません。この点からも、平均的な顧客ではなく、20%の顧客である、ヘビーユーザーをこそ観察すべきなのです。絞り込んだ顧客のニーズとウォンツに合った情報をその顧客に提供すると、まさに、自分のための有益な情報としてよろこばれます。
顧客を絞り込んでいない情報を提供すると、誰彼となく押しつける、ぶしつけで迷惑な情報(いわゆるスパム)として、商品サービスではなく、怒りを買うのがオチです。とりわけサービスでは、顧客も生産に参加(共創)することになるとともに、どのような人が顧客になっているかは、他の顧客にも大きく影響するので(憧れの人が利用している店に行きたい、あんな人が利用する店ならやめておこうなど)、ふさわしい顧客に絞り込むことが大切です」(88ページ)
このパレートの法則も、多くの経営者の方がご存知なのですが、あまり実践されていないようです。その最大の理由は、顧客との取引状況を管理している会社が少ないという、ちょっと単純な理由です。確かに、顧客ごとの管理をしていなくても、日常の取引状況によって、だいたいは把握できるという面もありますが、実は、これも思い込みがあり、採算がとれていると考えていた顧客は、実は、不採算だったということも少なくありません。また、別の理由は、利益をもたらしてくれる20%の顧客には、相対的に労力がかからずに商品を販売できる一方で、あまり利益をもたらしてくれない80%の顧客には、相対的に労力がかかるという面があります。
この労力がかかるという点がくせもので、労力がかかった顧客との取引が維持できると、利益増加に貢献したと考えてしまいがちになってしまいます。でも、労力がかかる顧客にかける労力を、労力がかからない顧客へ振り向けると、少ない労力で大きな利益をもたらしてくれるというのは、理解にかたくないと思います。でも、事業の現場にいる人たちから見ると、労力がかかる顧客を失うことの恐怖が大きく感じるので、なかなか、80%の顧客との取引を捨てることができないという会社が多いのではないでしょうか?
また、鈴木さんもご指摘しておられますが、取引先を選ぶことのメリットは、あまり理解されていない会社が多いようにも、私は感じています。例えば、スターバックスコーヒーは、サードプレイスを提供するというコンセプトがあるため、短時間でコーヒーを飲みたいという顧客を減らすことを狙い、注文を受けてからコーヒーを提供するまでに時間をかけているそうです。こうすることで、ゆっくりとコーヒーを飲みたい顧客の利用が増えるようになり、スターバックスコーヒーのコンセプトが際立ち、顧客からの評価が高まっているのでしょう。
2023/3/2 No.2269
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