会社のために働くな、自分のために働け
[要旨]
赤城乳業では、経験の浅い従業員でも、自分の意見やアイディアを自由闊達に言えるようにする、すなわち「言える化」を実施することで、ユニークな商品開発や、工場での改善活動が活発に行われています。このような、心理的安全性や従業員満足度の向上を図ることは、現在の厳しい経営環境において高い効果を発揮します。
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今回も、遠藤功さんのご著書、「生きている会社、死んでいる会社-『創造的新陳代謝』を生み出す10の基本原則」を読み、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。遠藤さんは、組織の活性化について、ガリガリ君などのヒット商品を製造している、赤城乳業の事例を紹介しています。「『強小カンパニー(小さくても強い会社)』を実現するために、赤城乳業がこだわっているのが、『言える化』である。
自由に何でも『言える』会社であり続ける、新入社員だろうが、経験が浅かろうが、自分の意見やアイディアを自由闊達に『言える』会社であることにこだわっている。それがユニークな商品開発、『遊び心』満載の販促施策、工場での改善活動などに生きている。若手社員であっても自由にのびのびと仕事をしている。大きな仕事を任され、壁にぶつかりながらも、それを乗り越え、会社に貢献しているという大きな自負をもっている。
井上秀樹会長は、新入社員に、『会社のために働くな、自分のために働け』と釘を刺す。『会社のため』を考える前に、『自分のため』をまず考える、自分を知り、自分を好きになり、目の前の仕事を好きになる。それができれば、そうした『場』を与えてくれた会社にも自ずと愛着がわくはずである」(256ページ)赤城乳業の「言える化」は、従業員満足度を高めることで、顧客満足度を高めるという、オーソドックスな手法です。
しかしながら、この従業員満足度を高めることは、頭で考えるよりも、実践することはとても難しいようです。「言える化」は心理的安全性の確保が前提となりますが、井上会長の言っているように、「会社のために働くな、自分のために働け」と、従業員の方に対して言うことができる経営者の方は、失礼ながら、あまり多くないのではないでしょうか?仮に、そのようなことを口にしても、経営者の方が、本心で口にしなければ、従業員の方には、その本心を見透かされてしまいます。
もちろん、このような「言える化」の定着を図ることは、経営者の方にとって難易度は高い活動だと思います。でも、「言える化」が定着すれば、会社の生産性は、赤城乳業のように、大きく向上します。そして、このような、心理的安全性、従業員満足度の向上による競争力強化こそ、21世紀らしい経営戦略だと、私は考えています。
2022/7/30 No.2054