見出し画像

簿記はスタンフォード大学の必修科目

[要旨]

会社の経営資源のひとつである、「かね」の論理を理解するには、「簿記」の仕組みを理解する必要があります。簿記の仕組みを理解できていないと、経営者としての管理能力が限定されることになるので、経営者にとって簿記を習得することは必須と言えます。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営共創基盤CEOの冨山和彦さんのご著書、「IGPI流経営分析のリアル・ノウハウ」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。冨山さんは、東京大学在学中に司法試験に合格し、卒業後は、ボストン・コンサルティング・グループにご勤務の後、スタンフォード大学でMBAを取得されました。そして、同書では、スタンフォード大学での冨山さんのご経験が書かれています。

「筆者自身の経験でもあるが、昔からスタンフォードのような、一流のビジネススクール、いや、一流校だからこそ、必修で嫌というほど、簿記の穴埋め問題を解かされ、それが終わると、三表連動のスプレッドシートを自分でつくって、電卓で計算をやらされる。(中略)この訓練を繰り返すうちに、この数字をいじると、こことここに影響が出るという相関関係がわかるようになり、不自然なものを見て不自然だと気づく感性が養われる。(中略)

(このような冨山さんの経験から)基本をないがしろにしてはいけない。そもそも、P/LとB/Sの違いがわかっていない人が多いのが現実だ。政治家も、B/Sの意味を取り違えている人が少なくない。何かあると、すぐに、『内部留保を吐き出せ』と言う人がいるが、B/Sの右側だから、吐き出しようがない。

B/Sの右側は、どこからお金を調達したかを書いてあるだけで、すでに調達したお金は、左側の資産に形を変えているわけで、使った結果が左側の資産となって並んでいる。(中略)そういう初歩的なことが分かっていない人が多すぎる。(したがって)私たちは、小学校から複式簿記を教えるべきだと思っている。だが、現実には、複式簿記がわからなくても、司法試験は受かるし、公務員試験も受かる。(中略)

筆者は、ビジネススクールで仕訳をさんざんやらされた。機械的に、ひたすら仕訳をして、それをP/L、B/Sに持っていくような地味なトレーニングをやらされた。当時は、大学院まで来てこんなことをしなければいけないんだと思ったけれども、今から振り返れば、やっておいてよかったと心底思う。そこまでやって、初めて、P/LとB/Sの意味が体感的にわかったからだ」(70ページ)

経営者の方の中には、残念ながら、会計を苦手とする方も少なくありません。さらに、簿記を習得する意義を感じないという方も多いと思います。ただ、冨山さんのような、大学在学中に司法試験に合格した方であっても、その後、簿記を習得し、「やっておいてよかった」と感じておられるというものであることも事実です。

サンリオピューロランド社長の小巻亜矢さんも、社長になる前に、幹部としてピューロランドに関わるようになってから、簿記を学んだそうです。小巻さんは、簿記を学んでから経営者としての視野が広がったと述べておられます。これからは、経営者には管理者としての役割の側面が重要になりつつあることから、日本商工会議所の簿記検定2級、または、少なくとも3級を習得することは必須であると、私は考えています。

2022/9/22 No.2108

いいなと思ったら応援しよう!