すべての取引銀行はメインバンクに従う
[要旨]
日本の銀行界では、メインバンク制度という不文律の慣行があり、ある会社に対する融資取引方針は、他の銀行も、メインバンクの方針に従うことになっています。したがって、融資を受けている会社は、メインバンクとの関係を強化し、自社がピンチになったときでも、支援を継続してもらうことで、他の融資取引銀行も、それに倣ってもらえることになります。
[本文]
前回の記事では、中小企業経営者の方の中には、銀行は、自社に対する取引方針を急に変えることから、信用できないと感じることが少なからず存在するものの、基本的には、銀行は、融資相手の会社の事業拡大に協力するという姿勢で融資取引を行っているので、その協力を得られるよう、融資を受けている会社からも、綿密なコミュニケーションを行うことが大切ということについて説明しました。ところで、前々回の記事で、安定的な資金調達を行うには、有力な銀行をメインバンクにするとよいと説明しました。
日本の銀行業界では、不文律ではあるものの、この「メインバンク制度」が重視されているのですが、銀行融資を利用している中小企業ではあまり意識されていないことが少なくないので、改めてご説明したいと思います。メインバンク制度とは、簡単に言えば、ある会社の融資取引について、メインバンク以外の融資取引がある銀行も、メインバンクの方針に倣うというものです。人気テレビドラマの「半沢直樹」でも、メインバンク制度にしたがって描かれる場面がありました。
すなわち、半沢直樹が所属する東京中央銀行は、経営再建中の帝国航空のサブメインバンクでしたが、同社のメインバンク銀行である開発投資銀行は、同社への融資の債権放棄をしようとしていました。本来なら、債権放棄するかどうかは、それぞれの銀行が判断することなのですが、メインバンク制度があるため、サブメインバンクの東京中央銀行は、メインバンクの開発投資銀行の方針に従わざるを得ない状況にありました。そこで、半沢直樹は、開発投資銀行の職員を説得し、同行も債権放棄をしないという方針に転換させ、結果として、東京中央銀行も債権放棄を拒否することに成功したというものです。
話しを戻すと、銀行から融資を受けている会社は、メインバンク制度にもとづいて、どのように銀行と接すればよいのかというと、もし、自社がピンチに陥ってしまうようなことがあったときであっても、メインバンクが支援を続けるという方針を表明してもらえるような関係を作るということです。そして、メインバンクが自社への支援継続方針を表明してくれれば、他の銀行も、これに従うことになるということです。こういった観点から見ることによって、メインバンクとの関係を強化することは、安定的な資金調達のために、とても重要であるということをご理解していただくことができると思います。
2023/9/8 No.2459
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