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融資は受けない方がよいのか(2)

[要旨]

融資を受けることに消極的な経営者は、リスクを大きくしないようにしたいと考えていることがその要因のひとつのようですが、そもそも、ビジネスはリスクに挑む活動でもあることから、リスクに及び腰である姿勢は、経営者にはあまり向いていないと、私は考えています。もちろん、リスクに対処する能力は欠かせないので、リスクマネジメントについてしっかりと学び、果敢にビジネスに臨むことの方が、結果として事業を成功させることができると、私は考えています。

[本文]

今回は、前回の、「融資は受けた方がよいか」という質問への回答の続きを説明します。前回は、融資を受けていない会社が黒字の場合、融資を受けることによって、その黒字額を増やすことができますが、逆に、赤字の会社が融資を受けることによって、その赤字額を増やすことになる、すなわち、財務レバレッジ効果が得られるということについて説明しました。

これに対して、「融資が赤字の原因ではないことはわかったが、それでも、業況が悪化したとき、融資を受けていると、財務レバレッジ効果によって赤字額が大きくなってしまうので、融資は受けない方がよいと思う」と考える経営者の方もいると思います。私は、融資の財務レバレッジ効果に関して経営者の方がどう判断するかは、その方が決めることであり、赤字になったときのことを考えて融資は避けたいと判断することも選択肢のひとつだと思います。

その一方で、事業活動は、そもそも、リスクとの闘いという面もあるので、事業活動に臨みながらも、リスクを大きくしないために融資を避けるという考え方は、経営者としては向いていないのではないかと感じます。もちろん、どのような会社であっても、リスクの顕在化を抑えるための対応は必要なので、リスクマネジメントを学んだり、経営品質を高めたりすることは必要です。

でも、融資を受けることに消極的な考え方は、こういった対応そのものに消極的なのではないかと思います。とはいえ、起業する時点では手探りで活動をしなければならないという面があることも否めません。例えば、Amazonも、当初は、インターネットを活用して書籍の取次販売をするという、小規模な事業として起業しました。しかし、起業してからは、取次販売だけでは顧客からの評価が不十分であると考えるようになり、物流会社を買収し、迅速に商品を届ける体制を整えました。

すなわち、顧客は、商品そのものよりも、迅速に商品が届くことに価値を感じているということがわかり、積極的に投資を行うようになったわけです。この例のように、経営者が、起業後にビジネスに対する考え方を変えることは、しばしば起きていますので、融資を受けることに対する考え方も起業後に変わる可能性もあります。逆に、融資を受けないことに固執することは、ビジネスが成功することの妨げになることもあるのではないかと、私は考えています。この続きは、次回、説明します。

2025/1/18 No.2957

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