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部長は部長という機能を果たす社員

[要旨]

ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人元社長の新将命さんによれば、部長は部長という機能を果たす社員、一般社員は一般社員という立場で機能を果たす人であって、上司と部下の違いは、高度の意思決定を求められるか否かにあるということから、上司は本人がエライから意思決定をするのではないということです。すなわち、立場にふさわしい仕事をしている人はエライのであり、立場相応の仕事をしていない人は失格ということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人元社長の新将命さんのご著書、「伝説のプロ経営者が教える30歳からのリーダーの教科書」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、新さんによれば、ビジネスで成功する人に共通する特徴は、焦らない、あきらめない、怠らないの3つで、すなわち、コツコツと努力を続ける人の姿は、周囲の人々を感動させ、それが大きな力となって、組織活動の成果が高まるということについて説明しました。

これに続いて、新さんは、部長や課長のポストは役割であって、上下関係にはないということについて述べておられます。「部長は部長という機能を果たす社員であり、課長は課長という機能を果たす社員に過ぎない。一般社員は一般社員という立場で機能を果たす人であり、エライ、エラクナイという、人間の本来的な価値とはまったく次元の違う話である。ところが現実には、この当たり前のことがわかっていない人が多い。

古い話になるが、私が日本コカ・コーラに移って間もないころ、定年後の再雇用で、かつての上司が戻ってきた。元上司が、現在の上司の所へ挨拶に行くと、現在の上司は、かつての上司に向かって○○クンと、クン付けで呼んだのである。念のために断っておくと、この元上司も、現在の上司も、日本人である。当然、現状氏は、かつては元上司のことと、○○部長、あるいは、○○サンと呼んでいた。昨日までサンづけで、今日はクンづけ、サンがクンに代わった。参勤交代ならぬ、『サンクン交代』である。

相手により態度や言葉が大幅に変わる、こういう人を、私は信用しない。上司と部下の違いは、高度の意思決定を求められるか否かにあるが、上司は本人がエライから意思決定をするのではない。意思決定をするのが役割だから、意思決定をしているのだ。あくまで機能分担の違いであり、人間としての価値には何の関係もない。年齢、業歴、経歴、ジェンダーなどとは無関係である。

女性の上司もまた、修羅場を経験し、スキルとマインドを磨いて、その役割にふさわしいと判断され、管理職に就いているのである。尊重すべきなのは立場であり、人ではない。女性であろうと立場にふさわしい仕事をしている人はエライのであり、立場相応の仕事をしていない人は失格である。正しいことを考え、正しいプロセスを経て組織の階級を昇ってきた人は、均しくその役割を正しく果たすことができる」(190ページ)

人は誰でも、マズローの欲求5段階説で言われているところの、承認欲求や自己実現欲求があるので、会社で働いていれば出世したり、部下に対して上司らしいことをしてみたいと考えることは自然なことだと思います。しかし、その欲求が強すぎると、部下との関係がうまくいかなくなり、組織活動の効率が下がってしまいます。そこで、新さんは、「部長は部長という機能を果たす社員であり、課長は課長という機能を果たす社員に過ぎない」とご指摘しておられるのだと思いますが、最近は、そのような考え方に基づいて事業活動に臨んでいる会社も増えてきているようです。

例えば、広島県広島市にある、眼鏡販売店のメガネ21(トゥーワン)では、部長や課長などの役職を廃止しているそうです。さらに、同社のWebPageによれば、社長についても、「対外的な意味で、社長という役職は残しています、社長といっても特別な権限もなく、単なるポストでしかありません、21の社長は4年交代制です、社長に就任しても、基本的な仕事内容は変りません、今まで通り接客、検眼、調整などが主な仕事です」と説明しており、「社長」は便宜上の名目的な役職となっているようです。

とはいえ、日本のほとんどの中小企業があてはまる、いわゆる、オーナー会社では、同社のようなことを実践することは難しいでしょう。同社は、すべての従業員が実質的な株主であり、経営に参画しているということもあり、部長職や課長職を廃止することが可能になっているようです。しかし、同社のWebPageに、「中間管理職の仕事は、トップの意向を下に伝えるのが主な仕事なので、情報をみんなで共有している21にはおく必要がありません、また21にはノルマもないため、管理する人が不要です」という説明があるように、少なくとも、伝達や管理をする役割は必要であっても、「エライ」人の存在は必要がないということは確かでしょう。

2024/11/2 No.2880

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