北風のような上司と太陽のような上司
[要旨]
会社の中には、部下を叱責してばかりいる北風のような上司と、部下にあたたかい言葉をかけてケアしている太陽のような上司がいますが、北風のような上司たたくさんいると、従業員のモラルがさがり、会社の業績がさがってしまうことにつながりますので、経営者の方は、両者のバランスを考慮することが必要です。
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先日、社会保険労務士の藤咲徳朗先生が、藤咲先生の配信しているメールマガジンに、北風のような上司と、太陽のような上司について書いておられました。北風のような上司とは、いつも部下を叱責している上司で、太陽のような上司とは、いつも部下にあたたかい言葉をかけている上司です。もちろん、これは、イソップ童話の「北風と太陽」に登場する、北風と太陽を、会社の上司にあてはめたものです。
藤咲先生によれば、ある会社の社長は、北風のような人だったのですが、その会社の部長さんは、太陽のような人で、社長が北風をふかせた後は、部長さんが従業員たちの心をケアしていたそうです。ところが、あるとき、社長が部長を降格させ、自分の息子を新たな部長に据えたそうです。
その後、降格された部長は会社を去りましたが、新しい部長も北風のような人だったためか、やがて、その会社は倒産に至ったそうです。ちなみに、藤咲先生は、北風のような上司は勇ましいので、経営者から評価されやすい一方で、太陽のような上司は、あまり目立たないので評価されにくいと、ご指摘されておられました。
今回ご紹介した、北風のような上司と太陽のような上司から得られる教訓は、多くの方にご賛同いただけると思うのですが、実際には、北風のような上司はなかなか減らないようです。その原因はたくさんあると思いますが、私が考える理由のひとつは、スキルの低い上司が多いということだと思います。
「スキルが低い」と言ってしまえば簡単ですが、なぜ、スキルが低い上司が多いかと言えば、上司の上司、すなわち、経営者の人材育成能力が低いからです。では、なぜ、経営者の人材育成能力が低いかというと、部下は命令で動くものと考えているか、または、命令でしか動かすことができないからでしょう。
結局、北風のような上司とは、部下のことを、将棋の駒の「歩」のようにしかとらえことができず、部下に対して、単に、「前へ進め」という命令しかできないということだと思います。そして、「前へ進め」というだけでよいのであれば、上司は誰にでも務めることができます。
裏を返せば、繰り返しになりますが、「前へ進め」しか言えない上司は、スキルが低いということです。でも、あたりまえですが、部下は、将棋の駒ではないので、太陽のような上司が部下に対して行っているような、心のケアも必要です。とはいえ、ここまで書いてきたことは、特に難しいことでもありませんし、真新しいことでもありません。
ただ、私がかつて勤務していた銀行は、約17年前に国有化(実質経営破たん)しましたが、そのときは、北風のような上司がたくさんいました。藤咲先生のメールマガジンを読んで、そのときのことを思い出しました。だから、会社の中に、北風のような上司が増えてきたら、それは、危ない会社の兆候であるということを、改めて感じました。そういった経験から、会社の経営者の方には、北風のような上司だけでなく、目立たなくても太陽のような上司についても、きちんと評価してほしいと、私は考えています。