不得意な分野は他人の力を借りる
[要旨]
バリュエンスホールディングス社長の嵜本さんは、それぞれ個性の異なる2人の兄たちといっしょに事業を展開してきた結果、自分の得意分野を発揮することができました。すなわち、自分の不得意な分野は無理して伸ばそうとせず、他人の力を借りることで、100%のチームをつくることが可能になると考えているそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、バリュエンスホールディングス社長の、嵜本晋輔さんのご著書、「戦力外Jリーガー経営で勝ちにいく-新たな未来を切り拓く『前向きな撤退』の力」を読んで、私が気づいがことについて述べたいと思います。前回は、嵜本さんがブランド品買い取り事業に専念することにした際、仕入れたブランド品の売却方法を、愛着があったインターネットオークションから、すべてBtoBオークションに変更しましたが、感情に左右されずに決定をした結果、次の事業展開が有利に進んだということを説明しましりました。
その後、嵜本さんは、事業を円滑に運営するには、個性を重視することが大切ということを述べておられます。「私は、昔から、冷静といわれることが多いのですが、そうした個性も、また、芸術家肌の長兄、行動力のある次兄と一緒だったからこそ、引き立たせてもらった部分が大きいように思います。ですから、この先、成長するにしても、『補完』を前提に成長をしていけばよいと私は考えています。
何でもこなせるマルチナ人も、広い世界を探せば、1人くらいはいるのかもしれません。しかし、大抵の人は、得意なことと、そうでないことの両面を持っています。所属するチームには、その得意なことと、そうでないことの両面を持っています。所属するチームには、その得意な分野で貢献する。そして、不得意な部分については、そこを得意とする誰かの力を借りればよい。平均点を目指す必要はないのです。
仕事のスキルを分類するのは難しいですが、例えば、企画・開発・製造・販売・マーケティング・広報・経理・財務・人事と分類したとしましょう。この時、社会人なのだからと、実力不足の、平均よりも遅れをとっている分野を、無理やり、平均にまで押し上げる必要はありません。それよりも、どれか1つで100%を極めることを考えるべきではないでしょうか?そうすれば、各分野を極めた人たちが集まって、100%のチームをつくることができます」(171ページ)
この嵜本さんのご指摘も、ほとんどの方がご理解されると思います。ところが、それぞれの分野で得意な人が集まったにもかかわらず、うまくいかない会社の方がに多いのではないでしょうか?これについては、嵜本さんが言及していませんが、私は、それぞれの得意分野を持った人をまとめる役割を、社長(または、幹部職員)が果たしていないからだと思います。
逆に、社長は「昼行燈」のような人で、何も仕事をしていないように見えるけれど、その社長がいるから、会社の従業員たちがまとまって仕事をしているという場合も見ることがあります。ところが、逆に、例えば、社長が営業が得意なので、社長が率先して顧客を獲得するけれど、従業員たちにも営業活動ができなければ問題視するという経営者の方も見るときがあります。確かに、民間会社なので、従業員たちは顧客を重視する考え方を持つ必要はあると思います。
でも、社長の「モノサシ」だけで従業員の評価をしてしまうと、嵜本さんのいう「補完」は行われなくなると思います。私は、会社の経営方針にそった人材育成をすることは重要だと思いますが、その前に、その土台として、会社でチームワークが発揮されるようにならなければならないと、私は考えています。チームワークが高まれば、お互いの得意分野で「補完」する組織ができあがり、組織として高い成果を生み出す会社になると思います。そして、チームワークを高める役割は、もちろん、社長が担うべき役割です。
2023/7/7 No.2396