社員が1番、お客さまは3番
[要旨]
松江市にある島根電工の社長の荒木恭司さんは、従業員と下請会社などの満足を実現することを通して、顧客満足を実現する、すなわち、「社員が1番、お客さまは3番」という考え方が、真に顧客満足を実現する方法と考え、これにより業績を高めているそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、島根電工の社長の荒木恭司さんのご著書、「『不思議な会社』に不思議なんてない」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、荒木さんは、管理職は営業マンを育てる役割があり、さらに、社長は、営業マンを育てる管理職を育てる役割があると考えており、こうした考えに基づいて人材育成をしてきた結果、同社の業績は向上してきたということを説明しました。これに続いて、荒木さんは、島根電工グループの特色について、「社員を大切にすること」ということについて述べておられます。
「島根電工グループの特色をひとつだけあげろ、と言われたら、私は、迷わず、『社員を大切にすること』と言うでしょう。以前は、『顧客第一主義』を掲げていたのですが、お客さま第一で制度や仕組みをつくっていくと、どうしても、社員に無理がかかってしまいます。そこで、島根電工グループでは、(1)社員とその家族が1番、(2)関係する会社(卸会社・メーカー・下請会社)の社員とその家族が2番、(3)お客さまが3番、(4)地域が4番、(5)株主が5番、の順にしています。
すると、お客さまの中には、『おまえは社員が大事で、お客さまは3番か』と文句を言ってくる人もいます。確かに、お客さまは大事です。でも、お客さまを第一の優先順位にすると、会社がおかしくなってしまうのです。(中略)最近は、競争が厳しくなってきたので、設備工事の会社でも、『24時間対応』を売りにするところがあります。そんなことをしたら、社員がかわいそうです。24時間、お酒が飲めないではありませんか。1番大切なのは、社員とその家族。
なぜ、家族まで含めるのかというと、家族は会社にとって、1番大切な社員を支えてくれる存在だからです。次に大切なのは、卸会社・メーカー・下請会社など、関係する会社とその家族です。取引企業は、私たちと一心同体、家族同然です。(中略)そして、3番目がお客さま。順番は3番目ですが、社員を大切にして、取引先を大切にすれば、大切にされた社員と取引先はお客さまのことを大切にしますから、結局、お客さまが大切にされることになるのです」(120ページ)
荒木さんは、「社員を大切にすることによって、お客さまを大切にする」と述べておられますが、私も、その通りだと思います。しかし、実際には、「お客さま第一主義」を掲げている会社は少なくありません。その理由の1つは、「お客さま第一主義」を掲げることは、顧客からの印象がよくなるからです。もう1つは、「お客さま第一主義」を金科玉条のようにして、「お客さまのためだから…」と、無理強いをしやすくなるからです。
しかし、そのような方法では、本当のお客さま第一は実現できないでしょう。でも、荒木さんも述べておられるように、「社員を大切にすることによって、お客さまを大切にする」という考え方は、顧客満足をどのように実現するのかという道筋を明確にしています。だからこそ、より確実に顧客満足を実現できると言えます。確かに、荒木さんのように、「3番目がお客さま」というと、顧客対応の優先順位が3番目という印象を持たれてしまうかもしれません。
でも、3番目というのは、優先順位ではなく、満足をしもらう順番であり、最終的には顧客に満足してもらうということです。したがって、印象をよくするための「顧客第一主義」を掲げることは避けることが賢明であり、荒木さんのように、顧客満足を実現するために、まず、従業員満足を実現するというステップを踏むことが大切だと思います。
2024/3/4 No.2637
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