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測れないものは管理できない

[要旨]

岩田松雄さんが、ザ・ボディショップの社長時代に、ライバル会社の覆面調査をしたところ、その結果は、ザ・ボディショップよりも高い評価を得たいたそうです。これは、自社従業員たちが自分たちに対して感じていた評価と異なり、大きなショックを受けたそうです。したがって、自社の評価は、自分たちの感覚で行うと自分に都合よく行ってしまうので、客観的なデータを取得してた上で事業改善に臨まなければなりません。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「今までの経営書には書いていない新しい経営の教科書」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、岩田松雄さんがザ・ボディショップの社長時代、毎日、すべての店舗の売上をチェックしていた結果、会社の全体も把握できるようになっただけでなく、果敢な経営判断を行うことができるようになったり、斬新なアイディアを生み出すことができるようになったりしたということを説明しました。

これに続いて、岩田さんは、客観的なデータの重要性について説明しておられます。「お客様の満足度が向上したかどうか、自社のレベルが向上したかどうか、定量的なデータがないと、感覚でしかわかりません。人の感覚はあてにならないし、だいたい自分に都合よく感じるものです。これがイメージや主観的な評価ではなく、絶対的な数値なら、誰もその結果を認めざるを得ません。できるだけ事実やデータを集めた、ファクトベースで物事を考える必要があります」(122ページ)

岩田さんは、ザ・ボディショップの社長時代、同社より後発のライバル会社のラッシュの覆面調査を行ったそうです。その結果は、ラッシュは自社よりも高い評価になっていたそうです。しかし、自社の従業員は、ラッシュより自分たちが優れていると考えていたため、その調査結果をみて大きなショックを受けたそうです。そして、岩田さんがご指摘しておられるように、客観的なデータが重要ということについては、ほとんどの方がご同意されると思います。

ところが、ザ・ボディショップでさえ、勘違いをしていたくらいですから、客観的なデータを得ることに積極的な会社は多くないということが実態でしょう。私も、中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から感じることは、中小企業が客観的なデータを取得することに消極的な場合が多いのは、労力がかかるということに加え、岩田さんがご指摘しておられる通り、自社の評価は自社に都合よく考えてしまうからだと思います。とはいえ、これについては、私も含め、ほとんどの人は、自分には甘い評価をしてしまう傾向があると言えるので、岩田さんのように、強く意識しないと、客観的なデータを得ることは避けようとしてしまうことになるでしょう。

だからこそ、自社の評価は客観的に行わなければならないわけですが、それを実践するだけでも、自社の弱点を迅速に改善できるようになるということは言うまでもありません。逆に、測れないものは管理できないわけですから、それでは社長の役割を果たすことができません。これは、「測定できないものに責任を負うべきではない」というドラッカーの考え方に通じるものだと思います。

2023/6/4 No.2363

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