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小説「メジャー・インフラトン」の描き始め(第1部作です。)その12

こんにちは、あおっちです。
10月🍁も半ば。
食欲の秋
🍔。
本当に何を食べても美味しいですよね~。
皆様いかがお過ごしですか?
フォローしていただいた皆様感謝しかございません🙂‍↕️
メジャー・インフラトン」スピンオフシリーズは、
前回の「その11」で終わりました。
こんどはオリジナル小説を皆様にご紹介できればと思います。
よろしくお願いします。

「メジャー・インフラトン」のイメージです。

① SF小説「H₃(ヘリウムさん:He-3)」

SF小説「H3(ヘリウムさん:HE-3)」のイメージです。

SFオリジナル小説「H₃(ヘリウムさん:HE-3)」は近未来のアクション活劇です。
主人公はフランス人、ミア・ロベルタ、29歳。
彼女は元フランス宇宙海兵隊の「Les Légionnaires Stellaires(レ・レジョネール・ステレール:星の傭兵)」の格闘技能を持つ戦士だったのですが、
3年前、夫でフランス宇宙軍情報将校だったガスパールとの離婚を契機に、除隊したのです。

ミアは、6歳の娘アリスを養い、娘を預けた両親の生活費を賄う為、
あえて高給料で危険の多い月面のトラクター・ドライバーになったのです。
この頃の地球は、すでに核融合電池が当たり前の世界。
その主燃料のヘリウム3は月面のレゴリスに多く含まれていました。
そこで、ミアは月面のレゴリス(月の砂)回収作業、通称「ヘリウム畑」の採取トラクターのオペレーターとなったのです。

SF小説「H3(ヘリウムさん:HE-3)」の自家用月面車のイメージです。

ストーリー概要】
第1部 月面での再会と新たな葛藤

① 意外な再会
月面コロニーのフランス・エネルギー公社の近くにアメリカの旅行会社のシャトルが不時着した。
「ヘリウム畑」で採取当番のミアのチームが救援に当たるのです。
乗客の救助を始めると、なんと離婚した夫のガスパールと、自分の両親に預けたはずのミアの娘、アリスも一緒にいたのでした。
 その時は、ミアには判りませんでしたが、既にガスパールは敵国のスパイになっていたのです。
 そして月面コロニーに潜入する為、ワザと不時着したのです。

SF小説「H3(ヘリウムさん:HE-3)」のイメージです。

② 裏切りの真相
 夫がなぜスパイになったのか、なぜフランスを裏切ったのかその真相が徐々に明らかになる。そして、自分との離婚の真相も。
 夫の裏切りに気づき、大きく傷つくミアだった。

③ H3を巡る陰謀
ガスパールH3に関わる大規模な陰謀に深く関わっていた。その陰謀は地球規模で運命を左右するかもしれなかったのです。

④ 娘との再会
 ようやく月面コロニーで娘アリスとの再会を果たす。しかしアリスは混乱しミアを拒絶するのです。
 また深く傷つくミアだった。

SF小説「H3(ヘリウムさん:HE-3)」のイメージです。

第2部 過去の決別と新たなスタート

① 決断
 ミアは過去と決別し、新たな人生を歩む事を選びます。
西側諸国の領有地の「ヘリウム畑」を守り両親が住み、自分の故郷のフランスを守る事を誓う。
 しかし、アメリカ、イギリス、日本、ドイツなど複雑な月の利権に関わるためツープラスツーを交わしたハズの軍事同盟国は動く事が出来なかった。

③ 仲間との再会
 敵国、極東アジア独裁国家が送り込んだ事が判明し、そのスパイのガスパールと対決するため、ミアは危険な月面での作戦を立てた。現在の仕事仲間と地球からフランスの宇宙海兵隊時代の同僚を呼んで作戦を進め始めるのです。

④ 最終決戦
 娘との間のわだかまりと解き、親子の絆を徐々に取り戻すミア
いよいよ月面や宇宙空間でのガスパールとの直接対決が始まった。
 そして、みごとガスパールを倒し、家族との絆も取り戻すミア。
地球に戻ったミア親子は、フランス政府とNATO軍より感謝され、
地球のフランス公社本部で表彰されるのだった。

 地球でのミアの最大の望み、
 ようやく自宅の両親と再会するミアと娘のアリスだった。

SF小説「H3(ヘリウムさん:HE-3)」のイメージです。

と言う感じです。
メジャー・インフラトンがないように考えて執筆中ですよ。
ちょっとしか進んでませんが😁

「メジャー・インフラトン」のイメージです。

第1部作テキスト、「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

ーー 「第6章 椎葉きよし課長 42歳。」後編までのあらすじ ーー 

新リニア姫路駅で、新大阪行きのリニアが来るまで札幌の自宅のシルビアと話をしていた。
明後日の法事で家族が栗山町に集まる打ち合わせをしていたのだ。
息子のアレクサンダーの中学での蛮行を注意するきよし。
朝からバレてむくれるアレク。
大笑いのシルビア。
そんな会話をしている内にリニアが姫路駅に到着した。
リニアに乗り込みきよし。 
きよしとの会話が終わり、ゆっくりキュウリの糠漬けを食べてノンビリするシルビア。しかし、アレクがむくれたままソファーで2度寝してしまった事に気が付いた。急いで息子を起し、玄関で息子を送り出すシルビアだった。

「メジャー・インフラトン」のイメージです。

「第7章 妹のエルジビエタリーム・マゾフシェ・シーラス・マズル係長」

「椎葉きよし 42歳」のイメージです。

 椎葉きよしがようやく新大阪に向かうリニア新幹線の座席に座り、一息ついた。
 リニア新幹線の窓の景色も、地下400メートルに緩やかに向かう真空チューブ内を照らす明かりの流れだけになった。

 滑らかに加速するリニア新幹線。

 リニア内で3D案内が流れる。
 あくびをしてから、ひと眠りしようとするきよし。そのきよしに連絡が入った。

( ブ〜ブ〜ッ、ブ〜ブ〜ッ! )

 点滅し、震える椎葉の手首のスマートハンド。
 シルビアの実の妹、エルジビエタリーム・マゾフシェ・シーラス・マズルの表示。表示された小さなホログラム正面の顔写真は、ほとんど若い頃のシルビアだ。

( 「エルジビエタリーム・M・S・マズル」(株)関西国際医療 淀川区西中島 )

 の表示だった。
 スマハンドをサッとなぞって通話するきよし。
 透き通る白い肌のポーランド美人がニコニコ笑顔のままホログラムで、手首に浮かび上がった。

「おっ。」

 音声が出るリモート通信なので、スマハンドに引っ付いてる小さなイヤホンを耳に入れた。

「第7章 妹のエルジビエタリーム・マゾフシェ・シーラス・マズル係長」のイメージです。

「椎葉課長?おはよう御座いま〜す。」

「マズル係長おはよう。うぁー、かぁー!眠い……。早いし。まだ家かぁ?あら、椎葉課長って、えっ?もぅ会社?あー、8時13分って早いけどぉ、あ~、今日は水曜朝礼か。んだ、エル?昨日、送別会したんだべや?なんか旨いもんでも喰ったべか?」

 ニコニコしながら正面の小端末に話かける金髪美人。

「そぅそぅお兄ちゃん!やっぱり新世界最高~やった。大阪三昧〜っ粉もんまみれ、串カツ食いだめ!なんぼでも入るっ〜て、なんでやねん!送別会の話やなく、」

 綺麗な青い瞳でチラッと、横に立つ同僚の伊東奏(かなで)を見る、椎葉きよしの義理の妹、エルジビエタ。

「今日、リニア新大阪くるん?本社に戻るん?ポー(ポーランド)のスミス部長から昨日連絡があって、納品書まだきーひんけど、どないなってる~って、納品書の話よ。部長からお兄ちゃん聞いてたん?」

 と、大阪弁で真剣に聞くエルジビエタ。
 北海道弁と大阪弁のごっちゃ混ぜで、素で答える椎葉きよし。

「あ〜それねー。来月の15日締めのやつだべ?後でいんちゃう?まだ6月の21日やし。それより昨日の新規契約の報告書が先だべって、あっ!お兄ちゃんは駄目だべさ。仕事中。椎葉課長〜しょ、エル姫。」

「自分でエル姫~言ってる癖に(あっ!)〜それに微妙に北海道弁出てるし!(ゲッ!)」

「だからゲッって何よ、ゲッて。」

 横見てアッカンベェ〜をする義理の妹のエルジビエタ。
 横で腕を組んでへの字の伊東奏と、クスクス笑う出社したてのOLたち。

「スミス部長の件~、だよな〜。」

「23日って、明後日の金曜日までだけど、きよし~出来とるかぁー?って。」

「あれっ?そうだっけ?なんで明後日だべ。」

 昨年末の会議を思い出す……。

【 会社会議室にて 】

 ダンボールを片肩に乗せて入室するO L達。会議室にドンドン積み上げる。

「お得意様のヨーロッパ・ポーランド宇宙軍の~たってのご指示で、今回は厳重、厳重にデジタルデータじゃなく〜あえてアナログデータ!」

 席を立つポーランド支店スミス部長。
OL筆頭で腕組をして立つ大きいメガネが似合う女の子に聞いた。

「黄(ホァン)主任。これでカタログ全部ですか?」
「ハイ部長。全部で~す。ウキャキャ。」
「有難う主任。よし!もってけドロボー!カタログ本が200冊〜っ!ドーン‼日本の常識が通じない相手の場合、納品書とか当月の可能性もあるのだ。そこを忘れない様に。」

 台湾出身の黄美玲(ホァン・メイリン)たちが積み込んだダンボールで、大袈裟に手を広げるスミス部長。
会議テーブルで頬杖ついて、チラッと見る椎葉きよし。

「売るのはいいけどォ、その後が大変だぁ、これはハハ……これを、売上伝票を手入力ってか。面倒~っ。それも当月請求ってなんやねん。面倒~。」
 と、鼻と唇にペンを挟んで愚痴をこぼす椎葉課長……。

「あっ!あら~っ。」ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 一連の会議の事を思い出した。

「そんで、なんで明後日?うわぁ〜聞いてない。」

 うるさい椎葉がジロっと搭乗客から一斉に睨まれる。
 手で口を押さえて、スンマセン、スンマセンと手を合わせてリニア新幹線の乗客に謝る椎葉。

「オホンッ、ゴホンっ!え~、今から本社に戻るけど〜。」

 エルジビエタに、すまないっと平手をしながら、急にヒソヒソ早口で小声になる情けない椎葉課長。

「エル姫様~っ。お願い。途中まででいいからカタログ本から対象ピックアップしてデータ入れて。そうだ、シルから聞いたけどぉ、エル姫様、先に札幌入るんだべ?タイミング的に今、お手伝いをして頂ければ明後日、お兄ちゃん大変楽なんです〜。エル姫様ぁん。んでんで、最悪カタログに納品した品番ごと付箋でも貼って頂ければ。ねっ?メイリンちゃんやカナちゃん達の総合力で。岩崎の、りっちゃんとか、みんなで。ねっエル姫様ぁん……。営業3課の結束力で!そう、そうだ団結力っ!……ねっ?お兄ちゃんからのお願い、お願い~っ。」

 マジ顔で、ムッとする義理の妹のエルジビエタ。

「なんでぇ私っ?」

 顔に指を指して周りを見るエルジビエタ。2人のOLも手を振りバツバツ〜の印。

「あのねぇ、お兄ちゃん。いやいやゴホン。課長、椎葉課長!今回の納品した医療品。ポーからジョージア国軍に移送するみたいよ。あっ!これは極秘。この医療品……軍の装備品ガラミで訳ありなんだって!シッカリ頼みますよ椎葉課長!書類作成もビジネスよ!」

 ションボリしながら3D画面を見る椎葉課長。

「義兄ちゃんのたってのお願い!エル姫様ぁん〜。」

 と、目一杯頼み込むきよし。

「エル姫じゃないっ!(うっ。)プライベートを会社に持ち込まないっ!(うっ。)そうでしょ?椎葉課長。(うぇ。)でしょ~。(うっ。)だから、どうよ!(うっ。)」

「姫様~。そこを推して、なんとかぁ。」

 目を思いっきりつむりながら言われ続ける椎葉きよし。

「何を言ってるの、椎葉課長!書類作成も大切な営業活動って、Sの字の付く誰かがいつも言ってるでしょう。違う?(ゲッ!)」

 あははっーと、エルジビエタの横で、腰に手を当てて勝ち誇ったように笑う伊藤奏と営業3課のOL同志たち。

「だからゲッって何よ、ゲッて。」

 奏とメイリンを見てからまた、アッカンベェ〜するエルジベエタ。続けて話すエルジビエタ。

「課長~?アナログで、超〜面倒〜。今の時代にカタログ本見て。手入力なんて~あり得へんあり得へん〜!ましてやポーランドに転勤する直前の日にぃ、めっちゃ面倒〜。」

 再びシワシワ顔をして舌を出すエルジビエタ。目をつむり、うなずく営業3課のOL同志たち。

「はぁ……たしかに〜この凄腕、敏腕の私、ポーランド支店からポーランド宇宙軍に迂回納品したのは480品目……調子こいた〜チマチマとぉ。細かすぎ~。」

 ガクッと首を落とす椎葉。

「でっしょう!究極の究極の〜薄利多売!(周りで男性社員も加わるゲラゲラ笑い声)を目指す凄腕・敏腕課長の宿命。し・か・も、私はこれから東京だっしー。」

「はあい?東京?聞いてない。」

「なんでお兄ちゃんにいちいち報告するの。経理のスペシャリストのりっちゃんも週末からお休みやっしぃ~。」

「えっ?りっちゃんも週末から休みって?」

「先週、営業ミーティングで報告済みですよ。週末から数名休みって。」

「ゲッ!」

「だから!何よ。ゲッって何、ゲッって!」

 腕を組んでいよいよ深刻になる椎葉きよし。

「んで、りっちゃんは?」

「りっちゃん含む5名は週末休みだから、健康診断前倒しで、水曜朝のミーティング終わったら病院に直行よ。」

「あらまぁ、じゃーさ。りっちゃんのワークステーション。りっちゃんに言って、立ち上げておいて。帰社したら速攻、納品書・請求書打ち込むから……。」

 うなずく伊東奏。

「了解。」

 岩崎律子が、ふた指で敬礼してからワークステーションを立ち上げ作業に入った。

「栗山、明後日だべさ、エル。」

「そう。東京に行って、合コンで札幌。それから栗山。私は忙しいのっ!」

 口を手で抑えてパタパタ手を仰ぐニタニタ顔のエルジビエタ。

「まぁ、いいけどぉ……。」

 唇を尖らせる椎葉。

「あっコラッ!コラッ、お兄ちゃんいじけるっ。いじけたでしょ~!」

 その時、割り込み通信が入る。

「よっ!わんばんこ?いやいや、おはようさんか?」

「え?」

 横から画面に割り込むのはポーランド支店のスミス部長。

「椎葉課長、アカン、あかんがな、頼むで〜ほんまに〜!きよし~、もう今月締めるで〜。去年の会議で言わんかったか?書類関係は、これから先方に合わせる時もあると。先週末、リモート会議で言っただろう。」

「ディレクトル、ト・ドピエロ・ドヴィエンツィオスティ・ピェルシ・ディエン、アレ・ニク・ニエ・スルシャウェム・ウ・トム・ミェシツゥ。(部長まだ21日だけど今月は聞いてないですよ。(ポーランド語)」

 への字になるきよし。

「エッラ、スルィシャウァシュ・オ・ティム?(エル?聞いてた?」

「ニェ・ヴィエム。(知らな〜い。(ポーランド語)」

 ぷいッと横を向くエルジビエタとニタニタ顔のO L連合。

「ディレクトル? コ・ト・ズナチー?(部長どういう事?(ポーランド語)」

「判らへん。判らへんがなぁ。なんや、なんやら親会社の取引先、きよし?(はい。)あれ、ほら、あれ!シラスだかチラスって。あんたら日本人が絡んどる同盟国軍のポーの事務方からの催促やねん。」

「いやいやいや。会議でも聞いてないし。」

「そうかぁ?もう、ワシ~朝早いから寝るがな。」

「ディレクトル。イェスト・チェンコ!(部長!キツイっす!(ポーランド語)」

「出来る、出来る!頼むで〜!ほな。ピッ!」

(スミス部長)の画面が消える。

「あっ。」

 ……黙る椎葉。

「朝、会社来たらメッセージ入ってた。スミス部長が連絡するとかなんとか……。」

「エル?」

「なによ。」

「エル?なんで部長〜。関西弁なんだべ?いつから、わざわざ関西弁なん?」

「論点ちがう!(あははっ)もうお兄ちゃん~!とにかく納品書の話よ!明後日まで。解った?薄利多売の敏腕課長!」

 画面外でクククっと腹を抱えて笑うOL連。と、隣の営業部の男性社員達。

「ま〜とにかく連絡しました。忘れないでね。来週火曜日からは椎葉家の大移動でしょ。新大阪、こっちの家のお兄ちゃんの洗濯物取り入れたし、お兄ちゃんたちの寝室もお掃除したしぃ、冷蔵庫も余計な物捨てたしぃ。戸締りやってるしぃ、はい。準備OK!え~それから、札幌の自宅の掃除も先週、済ませたしぃ。引っ越し準備はすっかり終わってるから。オールグリーン!お兄ちゃん、私の部屋の鍵はいつもの所ね!どうせ転勤といったってお正月までに、そっちに帰るし。お兄ちゃん、聞いてる?」

「了解……。」

 唇をとがらせて、少し凹んだ椎葉。

「あっ、コラッ!コラッまたいじける。(ククククッ)私はこれから朝礼終わったら東京だし〜、お兄ちゃんとは入れ替わりだし〜。それから明日の夜はススキノだし〜宜ぴく。」

 舌出してピースするエルジビエタ。

「コラっ。エル!」

「えへへ。」

 横に立つ奏。

「私も手伝わへんって課長に伝えたって!姫。」

 周りで笑い声。

「聴こえてる〜ちゅうねんカナちゃん!新大阪の駅地下の美味しいランチおごる!肩揉んであげるからお願い!モミモミするからん。」

 と、椎葉の虚しい声。

「モミモミって、これってセクハラちゃうの?あかんっあかん!姫、言うたって。」

 厳しく目をつむり腕を組むカナちゃん。
 笑い声が更に大きくなる。
 メイリンがわざわざ顔をエルジビエタに並べて画面に映った。

「課長ちゃん頑張っ〜!テへへっ。」

 また、横からドヤ顔のニタニタ顔のエルジビエタ。

「セクハラだってぷぷぷっ(笑)。もう朝礼始まるから終わるょ〜バカ兄ちゃん。」

 3人で(アハハの大笑い)。

「姫路から、もうリニア出た出た!20分で、すぐ本社に戻るからん!」

「ポー語のカタログ240冊ジャ〜ン!もってけ泥棒!スッミッスデ〜ス!」

 椎葉の机の上や机の前に無造作に置かれてるカタログ本を映すエルジベタ。OLも他の社員も大笑い。

「えっ!240冊って200冊じゃ、40冊増えてるべさぁ。えー。」

「追加でこないだ来たの。」

「えっえぇぇ!この現代において本から拾う手作業なんて駄目っ駄目っ。難しいポーランド語解るの俺と可愛いい義妹だけなんだから〜ん。あとカナちゃんと。日本の製品なのにわっざわざポーランド語になってる、訳わかんないカタログ!少しお助け。」

「頑張ってね!ジャね、ポチ。」

 ザ〜……そして、はぁ……とため息をする椎葉。横の客から(シーっ静かに!)と睨まれる。
 また、スンマセンと謝る椎葉。
 通勤ラッシュが始まり、大勢の通勤客が立ち並ぶ新神戸駅。その地下400メートルを安全速度300キロで通過するリニア新幹線。

( ただ今、新神戸駅を通過致しました。当リニアは後5分でリニア新大阪駅に到着致します。お降りの方は忘れ物…… )

「何がジャ~、ポチ。やねんもぅ面倒。……はぁ。」

 ブチブチ文句を言って……また、ため息。
 そして、ボリボリ頭をかく椎葉きよしだった。

 リニア新幹線は速度を落とし、緑豊かな宝塚の地下を通り新大阪駅に向かった。

          ◇        ◇

 
◻️ 新大阪にある15階建てのオフィスビル。
 
 よくあるガラス張りのビルが並んでいるがその1棟。㈱関西国際医療のビルだった。その中では朝礼で集合する為、忙しく廊下を歩く社員たち。

 そして席を立ち始める国際販売第1営業部、営業3課のある事務室フロア。
 足を組んで目をつぶりながら肩を揉むエルジビエタ。
 
「あ"ぁ~、もう!なんか朝から疲れたっ。ガナぢゃん、メ"イぢゃん朝礼行ご行ご。」
 
 椅子から立ち上がり、エレベーターに向かう3人。
 
「でも本当にいいんです〜?課長ひとりで大変ですよね?うひひ。今更、いちいちカタログ本からピックアップして手入力なんて。少し位、手伝ってもいいけどぉ。うひひひ。」
 
 と、優しいメイリン。そして手を振りながら厳しい顔をするエルジビエタ。
 
「かまへんがな〜。奏も、メイも1日中、自分の仕事あるでしょう。」
 
 エレベーターの前で立ち止まる3人の背の高いOL達。階のボタンを押しながら、伊東奏。
 
「ねえ姫、こっちのぉ新大阪の自宅でも、未だにィ、課長こうなん?」
 
 と、伊東奏。
 
「え?こうって?」
 
「ん~、面倒くさがりっちゅう、甘えるっちゅうか、だらけるっちゅうか。どないやねん。」
 
 と、伊東奏。
 
「あ〜このマンッマ。自宅の札幌でも、いっ緒っ。と思う。」
 
「へ~昔のアイドルマネージャー時代から変わらんのぉ。」
 
( ピン♪ )
 
 開いたエレベーター。先に乗り込むウキウキメイリン。既に大勢社員が乗っていた。
 無理やり、背中から押し入る伊東とエルジビエタ。
 
「でも、めっちゃ楽しそう。うひひっ。優柔不断でぇ、甘えん坊でぇ~あきらめ悪くて頼り甲斐なくてぇ。それで、イイ歳こいたオッちゃんでぇ、キモいアニヲタでぇ、」
 
( あはははっ! )
 
 周りの社員が一斉に笑う。最後のアニヲタの言葉に反応し、大笑いするエレベーターの社員達。
 誰の話か一発で解ったらしい。
 
「……でもメイリンは楽しいお兄ちゃんが欲しかったなぁ。うひひっ。」
 
 メイリンの腕を突く伊東奏。
 
「メイ、メイ、メイっ!優柔不断の下り要らないから。ここは楽しいオっちゃんだけにしときな。」
 と、フォローする奏。
 
( あはははっ! )
 
 爆笑するエレベーターの中の社員達。
 
( うひひっ! )
 
 楽しそうなメイリン。
 
「20年以上ほとんどお兄ちゃん達と一緒に暮らしてたから、楽しいんだか、何だか、良くわかんないなぁ……。」
 
 ボソッとつぶやくエルジビエタだった。
 
( ピン♪ )
 
 エレベーターが開いて朝礼会場に向かう3人。
 既に大会議室では社員が規則正しく朝礼の為の列を作り並んでいた。社員の列の先頭の方へ進むエルジビエタ達。並び終わるとエルジビエタの肩越しに、顎を乗せてしゃべるメイリン。
 
「うひひっ。新婚の子作り時期でもご一緒だったんですか?」
 
 興味深々のメイリン。
 
( メイ、シッ! )
 
 と、メイリンの後ろから注意する奏。
 
「興味深々。うひひひっ。」
 
 椎葉きよしの新大阪の自宅はポーランドから転勤の時、親友の勧めで購入した。
 同じ大阪、天神橋商店街の高崎薬品に勤める幼馴染みの小林の勧めだった。
 
良くある少し大きめの3階建、2世帯中古物件。

 31歳のきよしが初めて購入した家だった。

 引越し当初はシルビアと2歳になったアレクと3人仲良く暮らしていたが、ポーランドから春休みで遊びに来たエルジビエタが気に入ってそのまま住み着き、近くの私立の女子校、
通称“西女にしじょ(西中島国際女子学園)”に通い始めた。
 そして、すぐに栗山町から来たきよしの実の妹、オディアも住みつき同じく西女へ通う事に。
 
 彼女たちはこの新大阪の椎葉家を拠点にして美少女ハードロックバンド・ヴルーシカを立ち上げ世界的なアイドル・グループへと成長したのだ。

 しかし時が経ち、エルジビエタ達が高校卒業する頃、きよしの妻、シルビアが丘珠札幌宙空ステーションへ、ポーランド宇宙軍の派遣武官としてシーラス・札幌に転属となった。

 軍の都合でシルビアとエルジビエタの実の母、オリエッタも千歳打撃軍の科学技術アドバイザーとして召喚。ポーランドの実家から年に何度かくる為、椎葉家とマズル家用に札幌で新たに分譲二世帯型マンションを購入した。

 まぁ簡単に言うと4LDKと隣の2LDKのリビングの壁をぶち破ってドアを付けただけだが。
 
 新大阪の家は平日だけ椎葉とエルジビエタが通勤用に住んでいる。

 札幌が今の椎葉夫婦とエルジビエタの自宅となっていた。もちろん椎葉の妹、独身のオディアは自宅は栗山町のままだが、活動拠点として札幌と新大阪の部屋を勝手に使っていた。
 
「もぅええからメイ!あんたの!メイパパの話始まるよ。」
 
 メイリンの耳元でカナちゃんが注意した。
 ズラッと並ぶ社員の前で、メイリンの実父でもある社長の黄(ホァン)がマイクの前に来た。
 
「おはよう御座います。」
 
( おはよう御座います! )
 
 社員全員が返答する。
 総務担当の佐藤結衣次長が、社訓とラジオ体操係りを指名した。
 
「それでは、本日の社訓とラジオ体操!第1営業部、営業3課マズル係長!」
 
「ハイッ」
 
 カツカツカツ!とヒールを鳴らして列の後ろから正面に向かうエルジビエタだった。

本日も、お読みいただきありがとうございました。
それでは、また来週逢いましょう。

あおっち

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