見出し画像

ノルウェーと日本の民主主義

政治は、社会の方針決定やルール作りを行い、すべての人々に大きな影響を与え得るものである。

そのため、特定の個人や集団の利益に迎合するのではなく、公平に公益的な視点から判断が下されていくための仕組みとして、多くの国は民主主義という制度が導入されている。と認識している。

だが、その民主主義という仕組みは多くの場合、実態としての民主主義を伴っていない。
民主主義とは、市民1人1人が自身と、客観的な国全体の視点を立ち、
判断材料を入手し、思考し、投票する主体とプロセスがなければ成立しない。

にも関わらず、現代の日本人の大半は政治に興味が無い。
社会で起きていることにも、自分が所属する組織の未来にすらも思いを馳せることがない。つまり、民主主義の実態は存在していないということだ。

それは、資本主義的な仕組みの上で日々忙殺された日々を過ごし、休日は旅行や遊びなど、平日の忙しい日々から逃避するというライフスタイルを生きているために、社会的に必要な情報を得ることも思考する時間も持てていないことも一つの理由だろう。

そして、そのライフスタイルに生きる人々のコミュニティでは社会問題や政治の話をするのは忌避されてしまうため、尚更非思考的な連鎖に陥っていく。

しかし民主主義が機能していない一つの理由として、
「そもそも民主主義とは何か?」であったり、政治参加する方法そのものを、社会に出るまでに「教わっていないこと」「やったことないこと」
にあると考えている。

このような日本の課題に対して、ノルウェーが行っている面白い取り組みを紹介する。
------------------------------------------------------------------------------------

ノルウェーの「幼少期から政治を楽しく学べる仕組み」

ノルウェーでは、小学生や中学生から投票の練習をさせ、政党政治を教える取り組みが為されている。

北欧自体にも「学校選挙」という高校生を対象とした模擬選挙があり、
その敷居をさらに下げた小中学生を対象にした「子ども選挙」が行われている。(2017年のノルウェー国政選挙、2回目が2019年の統一地方選挙で実施されている)

投票方法は、学校でのデジタル投票がメインで、自宅から投票する子どももいるという。人口530万人の国で2017年の選挙直前の20日間で公式HPのページビューは268万回に上り、国民全体からの注目度もが非常に高い状態にある。

 子どもは、模擬選挙を通して選挙の仕組みや各政党の政策や違いを学び、
議論を重ね、投票を行う。
 その結果は、ある日一斉に公開され、各政党はその結果に一喜一憂し、
メディアは結果を速報する。どの政党が多くの支持を集めたか、全国、自治体、学校ごとに発表され、投票率の高い学校はその数字を誇りに思う。

 子ども選挙の目的は「ノルウェーの民主主義を学ぶ」ことであり、
民主主義、政治、議会、権力の分配、ノルウェーでは誰が何を求めていて、子どもや若者はどのように政治に影響を与えることができるのを知ることができる。

公式HPがメインの教材となっており、自治体ごとの政党の政策を見たり、自分が政党とどれほど意見が一致しているかを知ることができる「ボートマッチ」もある。学校の教材として先生が利用しやすい動画資料や指導要綱も、公式HPやYoutubeにアップされており、子どもたちが学びやすい条件が整っている。

例えば、「あなたはどうしたら社会の変革に加わり、政治に影響を与えることができるか」についての情報として次のような方法もシェアされている。
 ・新聞に寄稿する。
 ・プラカードを作って、抗議デモに参加する。
 ・青年団体に所属する。
 ・政治家に直接連絡する。 …etc.

その他にも…
 「自分の声や寄稿をメディアに採用されやすい書き方」
 「女性や若い人がされやすい威圧的な言論への切り返し方」など、
これらのような情報が多くの政党や団体の合宿や勉強会、新聞メディアでも頻繁にシェアされており、議論の中で自身の主張を伝える力や、相手の主張を受け入れる力、メンタルコントロール力を身につけるためにも活かされている。

子ども選挙では、子どもが記者になって政治家や大人に街頭インタビューもする。記者の立場に立つことで、ニュースはどのように作られ、質問の仕方や記事や動画のつくりかたによって印象操作もできることも体感し、メディアリテラシーも強化できる。最近では子どもが関わった取材動画がSNSなどに一般公開されるまでが普通の流れになっている。

         (情報元)季刊「社会運動:ワーカーズコレクティブ」
-------------------------------------------------------------------------------------

上述のように、ノルウェーでは子どもの頃から国の政治を考えることや、民主主義的なプロセスを経るということを「分かる」「できる」体験の一つとして認識していく。
そして、そのような体験を自身とその所属するコミュニティ(学校)の中で行うことで、社会的な話題を話すことも日常会話の中に埋め込まれていく。

その結果として、政治への関心や理解度が高く、投票率も高くなっていくのだろう。また、相乗効果として教養があり投票を行う有権者の声に耳を傾け、本当に社会の為になる政策が起動守成されながらもつくられていく。
のだと思われる。

対して、今の日本の教育システムで育った子どもたちは、ある日突然
「選挙ができるようになったよ」
と言われ、投票義務を押しつけられるだけで、社会が今どのような状況にあり、どのような解決策や政策が議論されているのかは全く知らされず、
それぞれの関心や情報収集力と判断力に委ねられてしまう。

そのため、興味の無い人たちは投票しないどころか、必要な情報すら集めることはせず、結果的に国全体の投票率を下げ、政治は国全体の意思ではなく、経済的利益を目的としたロビー活動を行うような人々の意見がマジョリティとなるか、人口比率の多い層(高齢化社会においてはシニア世代)の意見に偏った政策決定がなされていく。

このように、人々の無関心や無知による民主主義・政治の機能不全が起きている中で、ノルウェーのような取り組みから学び、政治や民主主義を身近なものに、機能する制度に変えていくことはできないだろうか。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?