メシ屋(シンプル・ライフ)
「我々は宇宙人だ」
「我々だって宇宙人だよ」
「おみやげがあります!」
「宇宙同盟だ」
宇宙人ドラマだと思ったらコマーシャルだった。そういうことがよくある。コマーシャルはすぐに終わるのがいい。
「何にでも合うマヨネーズ」
宇宙人がマヨネーズを手渡す。
隣の席から美味しげな匂いがする。厨房からフライパンの音がする。
「そばが切れてしまって」
料理長が出てきて申し訳なさそうに頭を下げた。
「そうなんですか」
「普通のメシになっちゃうけどいいかね」
そばは隣の席の分で切れてしまった。
だから、そばメシはそばなしになってしまうらしい。
「いいよね」
私たちは別に構わなかった。
「それで結構です」
元々メシを食いに来ただけだった。
一緒に漬け物があればもう満足である。
「はい、お待たせしました」
心のこもったメシが出てきた。
「いただきます」
「いいね。熱々だ」
近頃の私たちは、徐々にシンプルな方向に進んでいる。それが不思議と心地よく感じられるようになった。何かがなければ、ただあるものに着目するだけだ。
最後のお茶漬けが、今は一番の楽しみである。