パーカーが欲しい(スーパー・ドクター・カー)
何もかもがぼんやりとしている
つかむことができないのは
世界の輪郭
いつになっても
認めることができない
きっと
認められないのは
自分の方だ
自分が認められないから
未だ世界が目覚めないのだ
さまよった末にみつけた
希望の端くれは
もう
夕暮れの中に溶け始めている
あれからずっと
・
どうも冴えなかった。頭の中が思うようにまとまらない。まとまったとしても動けない。動いたようでずれている。届かない。あてが外れることばかりが続いていた。時間に弄ばれている。1時間が過ぎたはずと思っていると、時計の針は止まっている。けれども、次の瞬間にはもう闇に包まれているではないか。もはや自分だけの力ではどうすることもできない。
思い詰めて家を出た23時。街を行くドクター・カーに飛び乗った。
「いったい何事ですか」
「ずっとぼんやりとしてるんです」
「ふーん。いつくらいからですか」
「よくわかりません」
「お口開けて。腕を上げて。そんなに上げなくていい」
「深い寝起きですね」
どうも根本的な治療はないらしい。
(私で駄目ならもう医者なんてあてにならないということだからね)
「スープを出しときましょう」
「ありがとうございます」
「餅とアジカンも出しときましょう」
「はあ、どうも」
「ゆっくり聴いてください。夏が暑かったからね」
寝ぼけ眼のまま私はドクター・カーを降ろされた。
アジカンを頭に流し込みながら、夜の街を歩いた。
もう10月だ。パーカーが欲しい。
・
アジカンをショートショートに振りかけた
落書きは名医の処方箋
(折句「アジフライ」短歌)
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