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ニューソウルシーンを支えたギタリスト フィル・アップチャーチの名盤(その2)

前回に引き続きフィル・アップチャーチがギターで参加している名盤を紹介ということで、今回はロニー・フォスター、ベン・シドランなどのジャズ系のアーティストとの共演曲、そしてリロイ・ハトソン への参加作品を取り上げています。

ニューソウルシーンを支えたギタリスト フィル・アップチャーチの名演(その2)

第1回目での紹介作品もそうでしたが、アップチャーチは非常にテリトリーが広いギタリストで、ジャズ、ソウル、そしてポップスなど、多様なジャンルのアーティストと共演しています。

演奏スタイルも曲により使い分けており、バリバリのビバップジャズのようなソロを弾いている作品もあれば、ブルージーなソロをフィーチャーした作品もあったり、一方で、サイケデリックロックのような歪んだギターを弾いてみたりと、曲毎にマッチしたプレイをする数少ないギタリスト。

ただ、いずれもその根底にきっちりとアップチャーチ節みたいものが感じられます。今回も様々なスタイルが聴ける楽曲をいくつかご紹介します。


Ronnie Foster / Big Farm Boy Goes To A Latin City(1974)

キーボーディストのロニー・フォスターの1974年のアルバム『On The Avenue』からの1曲。グラント・グリーンのバンドでのファンキーなオルガンプレイも素晴らしいですが、70年代前半、Blue Noteからリリースされた『Two-Headed Freap』とこの『On The Avenue』は特に人気が高く、ヒップホップのサンプリングネタとしてもよく使用されています。

オルガンだけでなく、エレピ、アナログシンセも扱い、押し一辺倒ではなく知的なセンスの感じる音使い・フレーズは、スティービー・ワンダーと通づるものがあります。

このアルバム、なんとプロデュースがジョージ・ベンソン。確かにこの時期のベンソンの作品に感触が近いかもしれません。

様々な切り口で語れそうな名曲揃いのアルバムですが、ここはアップチャーチの紹介ということでこの「Serenade To A Rock」を。

ワウをかませた絡みつくようなバッキング、ロニーのオルガンとのコンビネーションも最高です。そして問答無用でカッコ良いソロ。ワウでの絶妙なトーンコントロール、緩急をつけた展開にグッと引き込まれます。

ちなみに、このアルバムではアップチャーチはベースも担当しています。他にもスティービー・ワンダーの「Golden Lady」のカバーなど聴き処の多い作品です。

Leroy Hutson / After The Fight(1974)

ニューソウル期の重要人物、そしてメロウソウルといえばこの人、リロイ・ハトソン 。1974年のアルバム『The Man!』からの1曲。

リロイ・ハトソン の所属していたカートムレコーズ(カーティス・メイフィールドが作ったレーベル)には、アップチャーチは専属的に起用されていますが、リロイ・ハトソン の作品にも多大なる貢献をしています。

このアルバムは特に貢献度が高く、多彩なギタープレイを聴くことができます。この「After The Fight」のように、クリーントーンのバッキング、ワウギターそしてエレクトリックシタールを使ったフレーズなどが織り交ぜられていて、一つ一つが単体で目立つというよりも全体としての構成力が高い楽曲が多いです。

本アルバム、他のリロイのアルバムよりは地味な印象がありますが、ドラムのクイントン・ジョセフの素晴らしいプレイなど、ミュージシャン目線で見ると非常に面白い作品だと思います。

リロイ・ハトソン の他のアルバムはこちらでも紹介していますので、もしよろしければ覗いてみて下さい。


Penny Goodwin / He is come back (1974)

レアグルーヴ・ムーブメントの中で再評価された女性ボーカリストの作品。当時はほぼ無名のシンガーで、アルバムもこの1枚しか出してませんが、内容は素晴らしく、大好きな作品です。

そしてここでのアップチャーチのプレイが素晴らしいです。特にこの「He is come back」。イントロから切り込んでくるジャズフィーリング溢れるプレイが最高です。

曲もブルース進行のジャズですが、ペニーの歌、ハモンドオルガンの味わい深いプレイといい、それに全編にわたってオブリで絡むアップチャーチのギター。とても短い曲ですが、何度でもリピートしたくなる、そんな曲です。

マリーナ・ショウがお好きな方には大推薦のアルバムです。


Ben Sidran / Hey Hey Baby(1974)

ドクター・ジャズの愛称で知られる白人ジャズボーカリスト、キーボーディスト、ベン・シドラン。この人はどう形容して良いのか非常に難しいアーティストでもあります。

ジャズ、ソウル、ロックの要素を巧みに取り入れたそのスタイル。AORの先駆けと言っても良いし、ブルーアイドソウルと言っても良いし。

近いところでいうと、ジョージ・フェイム、マイケル・フランクス、そしてその後のポール・ウェラーなどにも繋がる、ソウルを愛して止まない白人アーティストと言えるかもしれません。そして知性味を感じる楽曲、アレンジも魅力です。

そんな彼もアップチャーチをよく起用しています。ベンの多様な音楽性にアップチャーチはばっちりハマったのでしょう。

この「Hey Hey Baby」、楽曲的にも素晴らしく、ベンの優しい肌触りのボーカルと、真っ黒なバックの演奏の対比が最高です。

アップチャーチの乾いたトーンのカッティング、そして間奏部の歪んだトーンのフレーズが効果的なフックとなっています。

今回は4曲ほど取り上げてみました。いかがでしたでしょうか?まだまだ紹介したいものがありますが、続きはまたの機会にご紹介したいと思います。

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