[思い出]大学教授とお母さん
今思うとゼミの先生は社会的に偉い人だったのだ。
私達学生には、論文に対する姿勢はおそろしく真摯だが、夜遅くまで机に向かい続ける学生に、時々「お茶にしよう。」と大学生協でおやつをご馳走してくれたり、失恋して泣きまくる生徒に困り顔で「そんなやつ別れちゃって正解だよ。」と呟いてみたり、全くもってお父さんのような存在だった。
学生達はみんな先生のことが好きだった。
先生は、毎日愛妻弁当を作ってもらっていた。
たまに他の先生に誘われてどこかにお昼を食べに行くことになると
一人暮らし率も高い研究室の生徒に
「オイお前達。これ食べてくれないか?」
とお弁当を渡してくれる。
「食った後、洗ったりするなよ。」
と奥さんへの配慮も忘れない。
曲げわっぱに入った先生の愛妻弁当はとにかく綺麗でむちゃくちゃ美味しいのでみんな喜んで平らげた。
卵焼きがとにかく美味しい。料亭みたいだ。(行ったことないけど。)
そんな先生は、災害が起こると時々テレビに出ることになる。
先生は決まっていつも
「やだな。やだな。」
って言うんだけど
嫌な理由もいつも言う。
「母ちゃんから電話かかってくんだよ。」
「アンタ、こないだと同じジャケットじゃないかって。」
「ほっといてほしいよなー。」
「これ気に入ってんだよ。何着てたって別にいいじゃん。」
ちょっとめんどくさそうに言うのに、
ちょっと照れくさそうでもあった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
今、私はお母さんである。
先生みたいな子どもを育てたいと思った時(わけわかんないけど)
先生のお母さんはヒントになる。
息子の仕事にはあんまり口出ししない。
無視もしない。
ちょっとナナメの視点で
健康だとか、服装だとか
そんなことを気にしてるくらいが
いいんだろうなぁって思う。
学生の論文に
核心をついたことは言うけど
あとは学生のペースに任せて、
腹空かせてないか、
失恋したけど大丈夫かなとか、
気分転換にティーブレイクが必要だとか
そんなことで学生をサポートしてくれる先生は
間違いなくお母さんが育てたんだと思う。
今になっていいことに気がついちゃった。
授業はさっぱり忘れちゃったけど、先生すごくいいこと教えてくれてありがとう。
さーて、私は何ができるかな?
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