【縁に感謝する】花ゲリラ
昨日の朝、インターホンが鳴った。
モニターをみると宅配便だ。
「また夫が何か頼んだかー。」
と思いながら
受け取りに出ると
なんだか長い箱を抱えている。
「長芋?」「ゴボウ?」
受け取りのハンコを押しながら
私は訳がわからなかった。
宛先が私だったのである。
家に帰って荷物を確認した。
差出人はY子ちゃんだった。
な つ か し い!
若い時に働いた会社では
女性技術者は少なかったので
私は、上司の紹介もあって
同業他社のY子ちゃん、
Y子ちゃんの先輩のTちゃんと
一緒に勉強会に出席したり
プライベートでも遊んだりしてた。
この上司(仮に親父殿としておく。)は仕事はできるが周りにいる人を手当たり次第おかしなことに巻き込んでいく習性があった。当然当時Y子ちゃんも巻き込まれていた。
私とY子ちゃんが仲良くなるのには巻き込まれ仲間というだけで充分だった。
親父殿というのは、ちょっと可愛げがあって、かなり迷惑で、だいぶん可笑しくて、どこか温かくて、全く油断のならぬ人物であった(最大級に褒めている)。
…そういえば今年親父殿から年賀状が届かなかったよな。
そんなことをふと考えながら箱を開けてみた。
そこにはあったのは長芋でもゴボウでもなかった。
立派なカーネーションだった!
花屋でみないほど茎が長い。
やはり意味がわからない。
私はお昼ご飯をすませると、すぐにお礼の電話をかけた。
「久しぶりー!花届いた!嬉しいけど何コレ?どうしてる?元気?」
何年ぶりだろう。
聞けば彼女は、毎年決まった親戚に地元の名産であるカーネーションを送ることにしており、そのついでに、ふと頭に浮かんだ友達にも同じものを送ることにしているらしい。
そうしてびっくりした友達から電話がかかってくるのを楽しんでいるんだって。
世の中には様々な人生の楽しみ方がある。
私はY子ちゃんは相変わらず素敵だと思った。
ひとしきりお互い近況を話した後、
私はY子ちゃんに聞いてみた。
「別の会社だったのに私がY子ちゃんに聞くのも変なんだけど、親父殿って今どうしてるか知ってる?
今年年賀状来なかったわ。いつも自動で出してる感じで会社から来てたけど。」
「…そうか。ミルコさんは知らなかったのか。私もどっちかなって思ったんだよね。」
親父殿は昨年亡くなっていた。
Y子ちゃんのところには同じく親父殿繋がりのオヤジさんが、寂しくて話を聞いて欲しくて電話をかけてきたのだという。
そうだったか。私は電話魔の親父殿から最後にかかってきた電話の内容を思い出して、Y子ちゃんに聞いてもらった。Y子ちゃんも思い出話をした。
それから私は言った。
「今夜あたり夢でまたあのロクデモナイ電話がかかってきそうだ。」
Y子ちゃんは「ハハッ」と笑った。
親父殿の話は親父殿を知らない奴に話してもどうしようもない。
私はわかってくれるY子ちゃんに感謝した。
「いや、そっちにもかかってくるかもしれないから宜しく頼むわー。」
と言うと
「わかりましたー。」
と彼女が言った。
それからまたねの挨拶をして電話を切った。
電話の夢は全くみなかったけど、
今朝起きたら花瓶に生けたカーネーションをみつけた。
Y子ちゃんの送ってくれたカーネーションは中身はおまかせで、とんでもなくカラフルだ。
全品種、全色みたいな組み合わせ。
親父殿との思い出みたいだと思った。
親父殿、大量のヘンテコな思い出ありがとう。それからたくさんの人と繋げてくれてありがとう。
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