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妖怪ノイローゼ

「可愛いとか可愛くないとかはあんまり関係ないらしいの。」

友人の話は続いていた。

「不審者とかつきまといとかって、目を合わせてはいけないみたいなのよ。」

「目があってしまうと『この子はイケる』と思ってしまうみたいなのね。」

「ああ、なんか勝手に私のこと理解してくれるみたいに思っちゃうのね。」
私は返事した。

深刻な話なのである。
娘が学校帰りにちょくちょく同一人物に付きまとわれていて
電車に一緒に乗ってきたりもする。

そして娘ちゃんはとても可愛い。
私は小さな頃から話を聴いているし、何度か会ったこともあるから贔屓目にみてるのを差し引いてもすごく可愛い。

心配だ。

「そうそう。でも思い込みって怖いじゃない?相手のリアクションが自分の想像と違った場合、とんでもないことする人もいるもん。」

確かにこの頃世間はそのようなニュースで溢れている。

私達は対策を話し合った。

帰り道のルートを変えてみる。
時間をずらしてみる。
親も一緒に電車に乗ってみる。
春休みがある。
休み明けには忘れてくれるかもしれない。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ここで1つ困った事態があった。

極めて真面目に聴いているし、
心配もしているのだが
さっきから、ある考えが私の頭にまとわりついて離れないのである。

このようなことは普段私は口には出さずに心に留めておくのだが、
この友人と繰り広げる普段の会話を信じて思い切って話してみることにした。

「なんか…妖怪みたいだね。」

素晴らしきかな
我が友は!!
怒らなかった。
怒るどころか
いっぺんに
わかってくれましたよ!!

「妖怪っていうより幽霊かもね!」

「それそれ!『あなた、私がみえるんですか?』みたいな感じ。」

それから私達は大いに盛り上がりながら
自分たちのたてた対策を振り返った。

道や時間を変えるのは
方違えのようでもあるとか

親が付き添うのは
お坊さんと一緒に歩くようなもんだとか

ごちゃごちゃ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
もしかして
妖怪だとか幽霊の話って
現実世界の例え話なんじゃないかな?

興味深かった会話を振り返りながら家に帰って私はボーっと考えた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
それでそんな状態で
いつもの感じで気楽に読んだ話が
こんな話だ。

昔あるところに
どうも自分の妻はキツネじゃないかと怪しんでいる男があった。

男は大変悩んでいたが、ある日
山で出くわした修験道者に
狐狸妖怪の見破りたかを教わる。

喜んで家に帰り
教わった方法を試してみると
果たしてやはり
妻はキツネであった。
男は妻に暇を与えた。

ところが、である。

その方法を他にも試してみると
なんと男の住む村は
狐狸妖怪だらけで
人間は1人もいなかった。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

…逆?

おーい。
しっかりしろ私。
完全に妖怪ノイローゼだ。

でも面白い。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
長く縮こまっていた生命が
一気に溢れ出す春。

溢れて出てくるものの中には
良いものも
変なものも
なんでもあります。

みなさまもどうぞ
ご用心の上
お楽しみください🌸

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