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虐待や不登校や不眠症や薬物依存の子供がプロ占い師の幸せな男になるまでの話(仮) #5


ただ俺は、まだ父の姿に尊敬の念を抱いていたと思う
スーツでバシッとキメて仕事の夜の会合などに出かけていく父の姿はカッコよかった
ちょっとした憧れがあった

そのため大人になった今では家にスーツが7着ほどある
特に気に入っているのは金ボタンのダブルのスーツだ
そういった服の趣味や、酒好きな所、ディベートや演説が得意な所は父親に似ることになった
だが気持ちは大きく矛盾していた
尊敬はあれど酷く憎んでいたし、何より、憎めば自己を正当化できたからだ
あの人のせい、あいつが悪い
心の中で「慰謝料だ」と言えば、夜更けに父の財布から金を抜く事に罪悪感を抱かなかった
あるのはバレて叱られる時の恐怖だけだ
これで好きなものを買えて、復讐にもなる、効率的だとさえ思った。


自分以外の好きな生き物は飼っている黒いラブラドールレトリバーだけだった
あの子はとても優しい子だった、いつも怯えて泣いている俺のそばにいてくれた
母が俺を叱りつけている時は、わざと母にじゃれ付いて俺を守ってくれた
犬は好きだ、表情がいい、素直で悲しい時はちゃんと悲しい顔をするし誤魔化しもなく、可愛い

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