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”いま”が最良なら”未来”は?~「我等の生涯の最良の年」

古ければいいというわけではないけれども、古い作品には現代の作品にはないシンプルさと、それ故の含蓄があると思ってしまう。
今回もそんな作品を。1946年公開の「我等の生涯の最良の年」
・・・何回見ても覚えられないタイトルなのだ。。

アメリカの第二次大戦復員兵のまつわる話。
日本も戦後は大変ではあったが、それは復員兵も銃後の人も同じだった。一方戦勝国アメリカは、銃後はほぼ普通の生活が送られていたわけで、兵士からすれば家に帰ればまた元の生活を送れると思っていたのである。

しかし数日・数か月ならともかく、戦地に赴いて数年も経つ。それも過酷な戦地は、銃後の生活とは隔世の感があるわけで、そのようなギャップをすぐに埋められたであろうか。このような復員兵の問題は、20世紀のアメリカには終始ついて回ることになった。

ストーリーは、そんな3人の復員兵とその周囲の人々を描いて展開していく。そのうちの一人が幼馴染と無事に結婚するところで終わるのだが、果たしてハッピーエンドなのかどうか。
他の一人は元も働き先である銀行に復帰はしたもののどこかしっくりいかず、子供たちとも以前のような関わり合いが持てないでいる。
もう一人は仕事も続かず新婚の妻には愛想をつかされる始末。そんな中、もう一人の復員兵の娘と恋仲になるわけだが、正直「結局、それでいいの!?」という結末。

タイトルの「我等の生涯の最良の年」は、原題”The Best Years of Our Lives”のほぼ直訳。正直、どこが?と首を傾げてしまう。
思い人同士が結ばれることをもって結末とする点はやや安易なように思えるのだが、きっと彼らもこの先いろいろな困難に直面するだろうことを思うと、たしかにこの瞬間が「最良」と言えなくもない。

最後に、この作品でアカデミー助演男優賞を受賞した、ハロルド・ラッセル。プロの演技経験はゼロという信じられない経歴である。目を凝らしながら見てはいたが、その自然な演技には脱帽であった。
パラリンピックの余韻冷めない今こそ、見直されてもよいとも思った。

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