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老人と若人の生きる時間軸の違い~「ハスラー2」
名を取るか実を取るか。
勝負に生きる人間にとって、そんな選択を迫られる場面もあるのだろう。
そのはざまに揺れる心情を描いたのが今回の作品。1986年公開「ハスラー2」
まずなんといってもトム・クルーズが若い!
当時24歳だが、それよりもさらに若いというか幼く見える。若さと才気に走った感じがよく出ている。出過ぎていて、ちょっと敬遠したくなるほどに。
そのトムの彼女役を演じたのが、メアリー・エリザベス・マストラントニオ。マストラントニオ。声に出して言ってみたくなる点では、マルチェロ・マストロヤンニといい勝負だ。
ちょっと不思議な雰囲気を醸し出してはいたが、さほどキーマンというほどでもなくそのまま最後まで行ってしまった。
そして、ポール・ニューマン。正直彼の作品はあまり見たことがない。「スティング」くらいだろうか。誰かがどこかでコメントしていたが、ポール・ニューマンはどこでもポール・ニューマンだ、とか。そう言われればそうも見えるが、その佇まいがこうもサマになる俳優も今日日いないだろう。
表題の”ハスラー”とはビリヤード打ちのことではなく、本来は”相手をだまして金を巻き上げる勝負師”を指すのだとか。
あとあとで大金をせしめるためならワザと負けることも厭わない。そんな教えを若いビンセント(トムの役)に教える老練なエディ(ポール・ニューマン)だったが、次第に真剣勝負に目覚めていってしまう。
一方の勝気で熱くなりやすかったビンセントは、みるみるうちにハスラーとしての真価を発揮していき、最後にはエディとの対決で負けることで大金をものにした。
そもそもハスラーのような戦い方は、どちらかというと長期戦に向いていよう。先々があるからこそ、あとで大きく勝ちたいわけだ。逆に年老いたエディからすれば目も悪くなり足も痛めて先が見えてきたわけで、目の前の一戦一戦で勝負したい思いが高まったということか。最後の「カムバック!(字幕では「復活だ!」)」は、揺れていた気持ちにけじめをつけ、吹っ切れた掛け声なのだろう。
監督はマーティン・スコセッシ。ちょっとした捻りが加わっているのも頷ける。