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カナメくんは脇を締めた美しいフォームで内角高め時速146kmのストレートを打ち返す
カナメくんは脇を締めた美しいフォームで内角高め時速146kmのストレートを打ち返す。
打球を目で追うカナメくんは、打ち方を教えてくれた人の名前をもう思い出せないでいる。思い出せないことについて考えることもなくなっていて、やがてまもなくこのままいっさいを忘れてしまう。死んだ父のことが嫌いで、出て行ったカナメくんの母の再婚相手になる人だった。父よりも背が高かった。野球がうまくて、優しかった。カナメ
「カナメくんはお金がないから働く」
「カナメくんはお金がないから働く」
カナメくんはお金がないから働く。言い換えるとするならば、カナメくんは働いているのにお金がない。まったくないわけではないけれど、カナメくん自身が、お金がないと思うとするならそれはお金がないのだと言ってもいいと思う。どうしてお金がないのか。それはカナメくんがお金を使うからだけれど、使うお金があるということならば、お金があるのではないかと思われてしまうこともある。
「カナメくんは泣く泣く手放した」
「カナメくんは泣く泣く手放した」
カナメくんは泣く泣く手放した。カナメくんは泣く泣く手放すのだから、受け取る人には大変な感謝をしてもらいたかった。だってカナメくんは、場合によっては手放さなくたっていいのではないかという風に思っていた。もちろん手放す以外に、方法はないんだけれど、受け取り側の態度とか、表情とか、そういうもの、そういう様々な要素が、たしかな正しさで用意されているかどうかが何より重要
カナメくんは宇宙に行きたい
「カナメくんは宇宙に行きたい」
カナメくんは宇宙に行きたい。どれくらい行きたいかっていうと、すごく行きたい。あれほど宇宙に行きたいと思っている人を、私はこれまで見たことがなかった。超お金持ちの芸能人や実業家が沢山お金を出して宇宙旅行を計画し、インタビューで「子供のころから宇宙に行って見たかったんです」とか「誰も経験したことのないような経験をしたいんです」とかなんとか答えているのだったら見たこと