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ダンス・ダンス/ザ・シェイクス Dance Dance / The Shakes
80年代、東京に住んでいた時、時間とお金があると通っていたところが3ヶ所ある。
新宿ロフトと新宿末広亭と六本木WAVEだ。
俺はややメジャー寄りのポップな音が好きだったので、そういう音を聴きたいときには渋谷エッグマン、テイクオフセブン、原宿クロコダイルなどのライブハウス巡りを楽しんでいた。
T本君などは屋根裏あたりのハードコアを観に行っていて、今日は客同士の喧嘩に巻き込まれたとか、楽し気に話してくれた。
当時のライブハウスはとにかく汚いところが多かったし怖かった。
それをまた楽しみに行ったりしていたところがある。
今の洗練されたライブハウスとは一味も二味も違っていた。
ロフトには月一ぐらいでいろんなバンドを観に行った。
新宿西口にはUKエジソンとかvinylとか輸入レコード店がいっぱいあって、そこで物色してからロフトへというのが正規のルーティンだった。
雑誌「ぴあ」でチェックして好きなバンドが出演していると観に行った。
ザ・ルースターズ、BOΦWY(まだ6人編成だった)、PANTA、ゼルダなどなど。
中でもお気に入りだったのはザ・シェイクスというバンドだった。
当時はまだレコードデビューしていなかったけど、一度新宿ACB会館で見て以来機会があれば観ていた。
「こんなカッコいいバンド見たことない。ザ・シェイクスです!」
と自己紹介してから演奏を始めるので軽く失笑が起こるのだが、実際えらくカッコよかった。
ボーカルは兄ちゃんでギターが弟という4人組キンクス編成で、ベースもドラムもタイトで上手かった。
弟がギターの調子が悪いと不機嫌になるあたりも日本版キンクスだった。
曲はR&Bベースの3コード・4コードのロックンロールが主で、ラモーンズとボ・ディドリーをゴチャまぜにしたような曲やモータウンみたいな跳ねるビート曲があって、自分もこんなバンドがやりたいと常に思っていた。
オリジナル曲もさることながら、とにかくカバーのセンスが良かった。
ウオーキング・ザ・ドッグやアイム・トーキング・アバウト・ユー、ドント・ブリング・ミー・ダウン、シェイキング・オールオーバー、ドゥー・ユー・ラブ・ミーなど、ロックンロール好きならたまらないカバーのオンパレードだった。
来ている客はいつも同じで見た顔ばかりだったけど、徐々に知らない顔が増えてきたと思ったら、そのうちにレコードデビューすることになった。
こうやってみんな少しづつ階段を上って行ってデビューするんだな、というのを間近で見ることができた。
ただ、ブルースやR&Bをベースにしたロックンロールバンドの多くがそうであるように商業的な成功はなかなか難しいようだ。
「カッコいい」の価値観がきっと違うんだろうな。
こういうバンドが売れるようになれば日本も捨てたもんじゃないんだけどね。