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イーチ・アンド・エブリワン / エブリシング・バット・ザ・ガール Each And Everyone / Everything But The Girl

ワッペン会社を退職した後も、何か仕事を探さなければ死んでしまう。
またしても求人雑誌で探してとりあえずT大駅の焼肉店でバイトをすることにした。
T本君が「焼肉店のバイトは時給がいい」と常々言っていたから。
その焼肉店は7月から新規オープンするということで、6月に会社を辞めた俺にはちょうどいいタイミング。
ところが内装工事か何かがトラブってなかなかオープンしてくれない。
面接時に店長と名乗った人に「早く仕事させてくれ」と何度も電話した。
後で聞いたことだが、この時店長は「こいつはやる気があって使えそうだ」と思ったらしい。

ほんとかいな。

そんなこともあったが8月に無事オープンし、バイト生活が始まった。
時給は確か1100円だった。
当時としてはかなり高い金額だった。
その焼肉店は広いお座敷があったので、毎週火曜日のランチ時には近所の資生堂の研修所?から美容部員の見目麗しきお姉様方(25~6歳か)が大挙して店を訪れ、座敷で羽を伸ばしていた。

デパート1Fの化粧品売り場にいるみたいでむせ返るような香水の匂い。
それを嗅ぐだけでも勤めている価値はあった。

その店はオーナー社長が3Fに住んでいて、2Fが焼肉店、1Fが喫茶店だった。
店長は2Fの焼肉店と1Fの喫茶店を任されていて毎日行ったり来たりしていた。

ある時、「俺君、1Fの喫茶店で音楽をかけたいんだけど、歌謡曲じゃ嫌だって店の子たちが言ってて、何かカッコいい音楽知らない?」と聞いてきた。
オーディオも良いものを導入するという。
よし、ここは俺がいっちょう面倒見てやるか、ということで相談に乗った。
洒落た感じのカフェバーなるものが流行っていた時代だから、自分の趣味はさておき、それなりにカッコよくて耳心地のいい音を選んであげなければ。

そこでチョイスしたのが「エデン」エブリシング・バット・ザ・ガールだった。

うーん、我ながら良いチョイスだ。

他にザ・ポリス「シンクロニシティ」ちょっと古いがドナルド・フェイゲンの「IGY」などなど数枚。
邦楽も欲しいということでサーファーだった喫茶のチーフに敬意を表して山下達郎の「メロディーズ」と大瀧詠一の「イーチタイム」を。

メジャーどころだけど知らない人たちに紹介する目的があったのと、知っている人たちには良い音楽がかかっている喫茶店というイメージを定着させたかったので、このぐらいのメジャー感で良いのだ。

店の子たちは喜んでくれた。
「俺君のチョイス、お客さんからもすごい評判良いです」

まあな。

腰掛けのつもりだったが、居心地が良かったこともあって、
結局バイトとして2年間働いた。

ここで働いているときにU村さんとはお別れした。
半年ぐらいの短いお付き合いだった。
お別れした日の夕方、非番だったが店に行き、店長に話を聞いてもらった。声を出して泣いた。
店長はうんうん、といって小一時間話を聞いて慰めてくれた。
そこからなぜか日本の未来の話になり戦争の話になった。
なんでだろ。
スケールの大きな話をすると小さなことを考えなくてよくなるのかちょっとスッキリした。

それから1か月後、I原君の仲介もあってF原さんと復縁した。
ちょっと自分勝手すぎるか?(笑)






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