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2023年8月の記事一覧

〖詩〗 帰路

〖詩〗 帰路

この精神を丸めて
空に投げてしまいたい

ぽおん
ぽおん、と
遊ぶたび
マーブルが白くなっていくだろう

そんな想像をしていたら
列車は トンネルの中へ
ずぉ、と
飛び込んでいった

〖詩〗 海街

〖詩〗 海街

褪せたビルディングのすき間に
ミルク色の空地
あれは何かしら

1隻の船が
中を滑っていった

あゝ、ここは海街で
私はヨソモノだった
ここはいい街で
私は帰りたくない

〖詩〗 音

戦争を
勇ましい音楽にのせよう
撃ち合う音も
嘆く声も消して

そうすることで
創られる未来がある
過去と同じ景色
黒い雨の中

戦争を
本当の音にのせよう
私そっくりの人間が
凌辱されたときの悲鳴
あなたそっくりの人間が
大切な人を奪われたときの沈黙

そうすることで
拓ける未来がある
これまでにない景色
青い空の下

本当の音
これは心を窪ませるか
新しい音楽を奏でるには
そうする他ないのだ

〖詩〗 このごろ

〖詩〗 このごろ

ひとのことばに
さらされはてて
じぶんのことばが
みつからない

〖詩〗 ことば

〖詩〗 ことば

だれにとどくでもない
ことば は
なまけていて
しまりがない
かわいらしいな

むだばかりの
やくにたたない
そんなことば
わたしはすきよ

〖詩〗 あさがお

〖詩〗 あさがお

咲いていた 朝顔が

咲いていた 車輪の下に

いつか乗り捨てられて
サビきった自転車の
よれた車輪の下に

咲いていた 朝顔が

夏は こんなにも
余白なく 染みわたっている

〖詩〗 通勤電車

〖詩〗 通勤電車

私の目は
乗客の肩をぬって
窓の外のビル群をぬけて
空を探している
海を探している

〖詩〗 空

〖詩〗 空

世間には
人目を惹くものが多く
空だけが
ただあるので
空だけに
心を放っている