RIDEメンバー徒然note 〜なぜ今HIPHOPがおもしろいか〜
ディレクターの野﨑です。前職は、アパレルブランドを経て、雑誌の編集部に在籍してました。
HIP HOPを聴き始めたのはここ2〜3年の話。以来、個人的にずっとずーっと熱く(時流としては超遅)、朝からHIPHOP漬けの毎日で心マッチョ。
昔はHIPHOPに対してなんとなく「金のネックレス」「マッチョ」「シルバーごつめリング」「ビッ○!」「$$ダラサイン$$」みたいな勝手なイメージ(ひどい..)を抱いていたのですが、それだけじゃない一面を知り、いつしかすっかり魅了されました。
ぜひその奥深さやおもしろさを知ってもらいたく、今回のテーマに選びました。上記のような苦手意識がある方にこそ、読んでもらえたら嬉しいです。では早速。
ラッパーは「ジャーナリスト」といっても過言ではない、の話
1980年代を代表するアーティストに、パブリック・エナミー(PUBLIC ENEMY)というHIPHOPグループがいます。
アメリカの社会問題や権力への抗議など、メッセージ性の強い楽曲で知られる彼らですが、メンバーの1人が残した言葉として、こんな言葉があります。
なんとなく超パワーワード感。これはHIPHOPがもつメッセージ性は「社会的」であり、世間への「影響力やインパクト」を例えているのですが、少しわかりにくいので、さらにもう1つ別の言葉を。
これはイギリスのラッパー、ロイル・カーナー(Loyle Carner)がとあるインタビューで答えていた一節です。そして、以下のように続きます。
そう、彼らが伝えているのは、自分の身の周りに起きた出来事や育った環境を「リアルに語る」ということ。ビートにのせた”ドキュメンタリー”であるということ。
自分たちがどこで生まれて、どんなコミュニティで育ったか。アイデンティティを語り、リスペクトする文化がHIPHOPの核にあるのです。パブリック・エナミーも、ロイル・カーナーも、彼らに共通している点として「真実を伝える」というのがあります。
弱い人の心に寄り添うラッパー兄、ロジック。涙
では、もう少し具体的に。
例えば、ロジック(Logic)というアメリカ出身のラッパー。彼はアフリカンアメリカンの父親と白人の母親との間に生まれたのですが、幼少期から実の両親に差別的な発言や暴力を受けたり、その家族が薬物中毒だったりと非常に過酷な家庭環境で育ちます。
一例として、彼の「Take it back 」という曲の歌詞を挙げると(ざっくりとした意訳です…!本当の歌詞はもっと詳細で情熱的)
Wow....凄まじい…。でもここから、彼はこう切り返すのです。
OMG...
こんなリアルな背景で、説得力をもって、愛ある歌詞を歌うラッパー。兄貴…(泣)。背中ついていきたいbro。
かのボブ・マーリーが体を張って“PEACE&LOVE”を歌い続けたように、こういうやさしい歌に共感する人が増えれば、音楽が世界を救えるかもしれないって本気で思わせてくれるパワーがあるように感じます。
しかも韻というスキルを使って、真実を語る。カルチャーはアートなんだということが滲みすぎてうまく言語化できません…。すごすぎるよメーン。
兎にも角にも、さまざまな生きるフラストレーションのようなものを、音楽へと昇華しているのがすごい。
リズムがかっこよければかっこいいほど、多くの人に届き、歌詞に共感が生まれるほど、大きなパワーになっていく。こういうカルチャーが人の内省的な心をつなげて、ひとつのエンパワーメントになる様子がすごく好きです。
内省的なことって人には言いづらかったりするけれど、カルチャーの文脈から発信され共有されることで、享受する私たちの心が柔らかくなって、人に優しくなれたり、気づきや新しい視点を得ることってあると思います。
カルチャー自体の底力もすごいですが、なかでもHIP HOPは生きる教養を身につけられる教材のようだと感じます。
本当に伝えたくて生まれ出てくるものは、その人の脈や魂を感じる。リアルタイムでその一片に触れられているというだけでも「今を生きててよかったなあ」と思ったりします。そう、HIPHOPは熱いのです。
と、前半が長くなりましたが…。
ここまで真面目な感じできたのですが、ここからはライトに“おもしろ”をちょこっと!
曲中の「自分これから歌うアピール」や「合いの手」がおもしろい件
まず1つ目。よくひとつの楽曲に何人かのアーティストが参加していたりするのですが、その時にラップする前に自分を名乗ったりします。
それがカラオケの合いの手のように、囃し立て?のような感じだったりするのが結構ジワるのです。英語ではAd-Lib(アドリブ)といいます。
有名なカニエ・ウエスト(現在は「Ye」という名で活動)は、「Ahhhhhh OW!」って奇声をあげたり(笑)。21サヴェージというラッパーは、合間合間に「トゥエニーワン、トゥエニーワン」を鬼リピの自分アピール強めニイ。
さらに、ザ・ラッパーな見た目のミーゴス(Migos)という3人組ラッパー。彼らは特に囃し立てが盛んで、賑やかでいいのです。高音の「スクゥーート!」(意味は謎)という叫びや、力強い「Uhh~!(吐息まじりのややセクシーボイス)」などなど。
ジェームズ・コーデンの「カープールカラオケ」という番組でもアドリブについて触れられ(10:05〜あたり)、それぞれのお気に入りアドリブを披露していました。楽しそうで、いい文化。
茶目っ気のある人たちというのがよくわかるので、普通に映像としておもしろいです。
嫉妬心 丸出しボーイのドレイク
そして、2つ目のおもしろポイント。
世界的に有名なラッパーで、女性に対してジェントルな内容を歌うことでも知られるドレイク(Drake)ですが、ときに彼のキャラクターがいじられることがあります。
例えば「Hotline Bling」は、南国のようなチャカポコリズムに合わせて踊るダンスが「ださイイ」とバズったことがありました。
このMVのYouTubeコメント欄では、ファンが彼をいじって「Drake is the type of guy ~(ドレイクってこういう系男子)」で始まる大喜利コメント大会のようなものが行われていて、7年前にリリースされた曲にも関わらず、地味に更新され続けているのです。
例えば
個人的にこれ好きです。真面目ちゃんドレイク。
こんなふうに、たびたびファンからいじられる彼ですが、今年2月に昔の恋人リアーナとエイサップロッキーというNYのラッパーとの間に赤ちゃんができたとInstagramを通じて公開された時のこと。
(ラブラブな2人)
これを知ったドレイクはただちに、リアーナとエイサップロッキーをブロック。アーティストとして大成功している人気者のドレイクですが、器は意外と小さいよう…(かわいい)。
と長くなりましたが、こういった人間模様もおもしろい!最近だと、去年離婚したカニエ・ウエストによる、元妻キム・カーダシアンのボーイフレンドへの嫌がらせが大人気ないと話題になっていたりも。お騒がせYe 。
最後に、今年2月に開催されたSuper bowlのハーフタイムショーにスヌープドッグ(Snoop Dogg)と出演したドクター・ドレー(Dr.Dre)。
彼はN.W.Aという伝説的なHIPHOPグループのメンバーでしたが、このN.W.Aの自伝映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観ると、いかにラップが社会に対するフラストレーションを芸術へ昇華しているかがわかります。
そして、劇中でメンバーの1人であるアイス・キューブ(Ice Cube)が言い放った「俺はゲットーの現実を伝えるジャーナリスト」という言葉も印象的です。
そう、HIP HOPはそういうことなのです(Dope泣)。
この映画は本当にかっこいいので、ぜひとも機会があれば観てみてください。ご静聴ありがとうございました!
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