トップアスリートとメンタルヘルス
東京オリンピックも開催されており、様々なトップアスリートのニュースが話題となっています。
大阪なおみ選手が「うつ」を告白されたのは、多くのメディアで取り上げられました。彼女がメンタルヘルスについて繰り返し述べていたことから、大阪選手がメンタルヘルス不調を抱える事の遠回しな告白であることは容易に想像されるにも関わらず、世間は受け入れず批判し、最後に彼女が告白せざるをえない事態に至ったこと、それにも関わらずそのプロセスが不適切だというネット上のコメントが相次いだのは、残念でした。
そう、そのようなコメントを書き込んだ方々は、「メンタルヘルスへのリテラシーが低い」ことを声高に公表している事に全く自覚がない、、、、。
1996年の春、私が精神科医を志したのは、私自身のメンタルヘルスへのリテラシーの低さに衝撃を受けたという原体験からですが、残念ながら、2021年に至っても、メンタルヘルスについての啓蒙が、まだまだ、必要です。
サッカーのスーパースターの1人で、現在は日本でプレーするアンドレス・イニエスタ選手もうつ病の治療経験を自伝で告白されています。2008-2009年シーズンの、バルセロナFCでの絶頂のシーズン終了後に発症し、投薬治療と、カウンセリングを受けながら、バルセロナFCでの辛い日々を過ごした時期があったことが、自伝の最初の章に記載されています。
ダルビッシュ有選手も、うつないし自律神経失調症に2年間苦しんだと告白されています(自律神経失調症については解説記事を読んでください)。
「うつ病とサッカー」
サッカーの強豪国であるドイツ代表も務めた選手のうつ病との闘病とそして死が描かれています。
表紙の言葉が素晴らしいです。
これは悲劇の物語ではなく、うつ病の啓蒙書である。
同書の翻訳者であるジャーナリスト・木康公嗣氏の解説記事も是非とも読んでみて下さい。
心身ともにタフと目されるトップアスリートであっても、メンタルヘルス不調やメンタルヘルス疾患に苦しむ事は決して遠い世界の話ではありません。精神科専門医の視点から見ると、多くの選手がメンタルヘルスの問題にて、競技から離れたり、キャリアを満足に過ごせていないように見受けられます(ご本人が遠回しに告白されている事例も多いです)。
このように、トップアスリートの勇気ある告白によって、メンタルヘルスについてのリテラシーが高まるきっかけになることは、喜ばしいことです。
その「勇気」が賞賛されなくなる日が来ること、そういう社会の実現を、マイシェルパは目指しています。
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