覚えていますか?【#贈りnote】
先生。
お久しぶりです、先生。
もう20年近く前になりますかね。
転勤先の中学校で、先生が担任になった3年2組。
僕はその中の一人ですよ。
覚えていますか?
大人になってから思うと、転勤先でいきなり卒業学年を受け持つって、めちゃくちゃ大変ですよね。
当時の僕は、どんな生徒でしたか?
真面目でしたか?
ヘタレでしたか?
生意気でしたか?
もしくは、その全部かもしれませんね。
覚えていますか?
先生の第一印象は、とにかく怖かったです。
遠藤憲一のような強面に、曲がったことが嫌いな体育会系気質。
担任かつバドミントン部の顧問と聞いたときには、正直ビビりちらしていました。
ところが、実際に接してみると気さくで話しやすく、けっこう良い先生だなって。
まぁ、字が下手すぎて「な」が「る」にしか見えず、「先生、それ何て書いてあるんすか・・・?」って質問したのを思い出しました。
覚えていますか?
先生が来てから、部活の雰囲気がガラッと変わりましたね。
それまではバドミントン経験のある指導者がいなかったのもあり、大学で言うところのサークルみたいな、ゆるゆるな感じでした。
そこに、鬼コーチこと先生が赴任したことで、勝利への意志が燃え始めることに。
おかげで、身も心もビシバシ鍛えられたと思います。
今ではほとんどそぎ落とされましたが。
先生の熱い言葉は、僕の心を打ちました。
「お手手つないでバドミントンなんかやりたくねぇ!やるなら勝つためにやるぞ!」
当時の僕は「そもそも手つないだらバドミントンできないだろ」と心の中で揚げ足を取っていましたが、その熱血さは確実に伝わっていましたよ。
覚えていますか?
先生との一番の思い出は、受験のときでしょうか。
志望校に落ちた僕を励ますために、先生はわざわざ家まで来てくれました。
そして、2階にいる僕に向かって、階段の下からこう言ったんですよ。
「落ち込むことないからなー!」
同情なんかじゃない、力強く、真っ直ぐな、先生の声。
今思えば、こんなに誰かから激励を受けたのは、後にも先にもこのときだけです。
その2日後くらいに追加合格の連絡があって、結果的に僕は志望校に合格しました。
学校に行って、職員室でスタンディングオベーションを受けたんですよ。
先生、励まし損でしたね。
でも僕は、先生のその少し図々しい優しさが、とても嬉しかったです。
覚えていますか?
先生。
あなたの訃報を聞いたときは、驚きのあまり言葉が出ませんでした。
それも亡くなってから数年後のことだったので、何も知らなかった自分が嫌になったのを覚えています。
一度くらい、酒を酌み交わしたかったな。
先生。
僕のこと、覚えていましたか?
僕との思い出は、走馬灯に映っていましたか?
映っていたら嬉しいな。
先生。
たった一年間だったけど、先生が来てくれて嬉しかったです。
先生が担任で、嬉しかったです。
先生が顧問で、嬉しかったです。
先生に出会えて、本当に良かったです。
先生。
たまに思い出すから、もうラケットのグリップ部分で頭を叩かないでくださいね。
本記事は、おだんごさんの企画に参加する形で作成しました。
素敵な企画だなと思い、読んだ瞬間に参加を決意しました。
しかし、”たった一人に贈る”というのは、意外と難しいものですね。贈る相手を決めるのに苦慮しました。
最終的に、今は亡き恩師へのメッセージとさせていただきました。
ちなみに、プレゼントはA賞希望です(もちろん絵本も素敵なのですが、どちらかというと副賞狙いです。すみません・・・)。
よろしくお願いいたします。