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信用って一体なんなのよ。


「お前のことは信用できない」

「信用できない人とは一緒にいられない」

「だからお前とは一緒いにいられない」


そう言われ続けて、それでも縋って。 


私なにも悪くないんだよ。


彼は聞く耳を持たず私に「信用できないやつ」という烙印を押した。



これはきっと精神的DVに値するのだろう。


数年前に付き合っては別れてを繰り返していた恋人との話。

この経験があったからこそ私は「信用」とはいかなるものか日夜問わず考え続ける羽目になった。



彼は様々な難癖をつけて私をいつも苦しめた。


「あいつと浮気しているんだろ」

「絶対にそう。俺には分かる。」

「そんなの嘘に決まってる」

「お前の行動が全てを物語っている」

「お前のことは信用できない、だから一緒にはいられない」


私にはいつも思い当たる節がない。

彼の頭の中で生まれた妄想によって彼自身も苦しめられていたのかもしれない。

だからと言って私を嘘つき呼ばわりしたり信用できないと突き放してもいいというわけではないだろうに。


「お前の行動が全てを物語っている」って?

彼が言うには以下のような言い分ばかり。


・お前の好きなバイクの車種は俺が乗っているバイクとあいつが昔に乗っていたやつだろ。だからお前はあいつのことが好きなんだろ。浮気しているに違いない。

・お前はあの社員と喫煙所に行くタイミングがいつも同じだ。浮気してるんだろ。

・お前はいつもあの先輩とふたりでアイコンタクトをとっている。俺が気が付いていないとでも思ったか?お前は浮気している。



話を面白おかしくするために盛っているように思えるだろうか?

でもこれは誇張でもなんでもなく私自身に起きたなんとも理解しがたい言い分だった。


そして毎度のごとく突きつけられる言葉は「信用できない」


私は気が狂いそうだった。

むしろ気が狂っていたからこそこんな男に惹かれ、好きという幻想を抱き続けていたのかもしれない。



私が一体なにをしたというのか。


念のため言っておくが当時のわたしにとってやましいことや、やましいと思われるような行動ななにひとつしていない。


全て彼の被害妄想だった。



私が彼を対象とした恋愛依存症に陥っていると同時に彼も私に依存しており、オセロ症候群かもしれないとも疑念を抱いた。


依存(いぞん、いそん、英: dependence)とは、身体的依存を伴うもしくは伴わない、薬物や化学物質の反復的使用である。行動的依存、身体的依存、心理的依存は物質関連障害の特徴である。(中略)渇望が生じている状態を「依存が形成された」と呼ぶ。依存対象の種類については、(中略)人間関係や関係への依存(共依存、恋愛依存症、セックス依存症、依存性パーソナリティ障害など)があり、重大な精神疾患にいたるケースもある。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オセロ症候群(オセロしょうこうぐん、英:Othello syndrome[1])は、「パートナーから裏切られるのではないか」「相手を失うのではないか」などといった恐怖心から根拠のない嫉妬妄想が抑えられなくなる症状のことである。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


だが当時の私には成すすべはなにもなかった。

彼が私を「信用できない」と突き放すたびに私は「別れたくない、一緒にいたい」とみっともなく泣いて縋って目の前で自殺行為に及ぶこともあった。



そもそも信用とはなにものなんだろうか。


私の考えとしては信用とは過去の行動や態度、実績などをみたうえで信用できる・できないが決定されると思っていた。

その点に関してのみ彼とも意見は合致していただろう。


だが[過去の行動]のせいによって彼の中で私は信用できない人間にカテゴライズされてしまったのである。

そして私には思い当たる[過去の行動]はなにもない。

彼の頭の中にある妄想によってわたしたちはお互いを傷つけあい、そして傷を舐めあい、互いに共依存の関係を深め、日を追うごとにボロボロになっていった。



私は彼の[信用]を取り戻せるためならなんでもやった。


・彼からのLINEの返信は最優先事項。

既読をつけてから1分以内に返信しないと他の男と連絡を取っているだろうと言いがかりをつけられるから。


・Twitterは辞めた。

元々彼に勧められて始めたものだったけど投稿に難癖をつけられたりそのせいでケンカになったり何が決め手になったのかは記憶が定かではないが疲れてしまって更新することをやめた。


・睡眠時間の報告。

心拍や運動、睡眠を計測してくれるウェアラブル端末を使用していたので就寝時間と起床時間はおおむね把握できる。彼が要求した際にはその画面を共有していた。

四六時中彼と連絡を取っていたが、「おやすみ」の連絡を入れた後に家を抜け出して他の男と密会していることを疑っていた。

それに「おやすみ」の連絡から入眠までに時間がかかった日には、寝るまで他の男と連絡していたんだと私を問い詰めた。


・常に通話を繋いでいた。

彼が職場につくまでと職場から出るまでの間を除き常にLINEの電話を繋ぎっぱなしだった。(私は在宅ワークだったのでそれが可能だった)。時には彼が仕事の間にも繋いで日もあった。

それは夜に寝ている間も常に通話状態。

普通に考えたら息がつまるようなことだろう。だがその時はその行為すらも私にとっては当たり前のことだった。


・日々の行動記録をアプリで管理した。

SilentLogというアプリをスマホに入れた。

これは中々優れもので何時から何時までどこに滞在したか、場所を移動したなら徒歩なのか乗り物なのか、通った道のりのルート、その日に撮った写真が一目瞭然である。

これがあれば何日にどんな行動をしたかを記憶に頼らず報告できるのだ。



以上のことをしても彼の態度は軟化することはなかった。

これ以上疑われるのもほとほと疲れてしまい、物理的に常に一緒にいること=同棲することを選択した。



そしてこの選択が大きな間違いだったと後になって知ることになる。



それまでは私を疑う行為は歪んだ愛情からくるものだった、と思う。


だが同棲生活を始めると彼の様子は変わってしまった。

それまでは「好き」「可愛い」「ずっと一緒にいたい」

そんな言葉をかけられて愛されていることを実感していた。


しかし同棲して2ヶ月ほどたったころだろうか。

次第に私が話しかけても無視されたり、ため息をつかれたり、舌打ちをされたり、一緒にとなりで寝ていたのに彼はリビングで寝る回数が増えていった。


私の半軟禁生活は変わらない。

基本的にひとりで外出することはできない。行けるのは最寄りのスーパーだけ。


これまで言われたことのない暴言を吐かれるようにもなっていった。

「デブ」「ブス」「豚に豚って言って何が悪いの?」「死ぬなら勝手にひとりで死ねよ」


洗脳状態にあった私はますますその言葉を言葉通りに受け止め酷く傷ついた、んだと思う。

うつ状態にあり丸一日部屋の中で過ごし、曜日感覚も不安定でもはやなにがなんだかわからなく頭の中はいつも混乱していた。

「デブ」や「豚」と言われないようにダイエットに励んだが、その様子を見て彼が馬鹿にしたように笑うものだから虚しくなってそれもできなくなってしまった。



それでも私は彼のことが好きだった。


彼も同じようにそんな態度を繰り返しながらも私を好きだったのだろう。


本当にバカみたい。おかしな話よね。




付き合っては別れ、を何度も繰り返してきた私たち。


もうとっくに限界は迎えていた。

「私、実家に戻ろうと思う」

意を決して彼に伝えた。その声は震えていただろう。

「あっそ、じゃあ別れよ」


彼の返事はあっけないものだった。




実家に戻って数日後、彼から連絡がくる。

「やっぱり俺にはお前しかいない」

「愛しているからもう一度やり直そう」

「もう絶対に傷つけたりしない」

「信じてほしい」


これが最後。

これが最後だからもう一度だけ信じてみよう。


彼の甘い言葉は私の判断をいつも狂わせた。


こんなことを繰り返して何度も付き合っては別れ、といつまでも抜けられないループにハマってしまうのだ。



そうして何度目かの交際中に事件は起こった。


ここではその事件の内容に触れることはできないが、私にとって何にも代え難い絶対に許すことのできないことを彼は冒してしまったのだ。



そして最後の別れを告げた。


今までと同様に別れたとたんに優しくなる彼。


いくら一緒にいたいと、

好きだと思っても、

もうもとに戻ることなどできない。



どれだけ好きでも、好きなだけでは一緒にはいられないのだ。


私は彼の起こした行動によって完全に彼を信用できなくなってしまった。



こんなどうしようもない人でも私は好きだったから、彼との別れには耐えがたい苦痛がともなった。

だが「信用できない人とは一緒にいられない」。


彼の起こした[過去の行動]は変えることのできない事実だったから。

私は彼を信用できない。





これが私が[信用]について深く考えた出来事の一部始終である。


大半は精神的DVとモラハラによって洗脳された馬鹿な私の体験談の話になってしまったが。



信用とは過去のその人の行動や言葉や態度、実績などの事実を判断したうえで使われるべき言葉だとあらためて思った。

そんな話でした。



あまり言葉や表現に捉われ過ぎてしまうのはよくないけどね。




ここまでお付き合いいただきありがとうございました。





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