小鳥書房様との出会い|文学フリマ札幌|
文学フリマ札幌にて、小鳥書房様の、丁寧に編まれた本と出会った。今回購入したのは、下記2冊。
◆ちゃんと食べとる? 中本忠子 食べて語ろう会
◆本屋夜話「小鳥書房文学賞」詞華集
それぞれについて、拙いながらもレビューを綴りたい。
(1)ちゃんと食べとる? 中本忠子 食べて語ろう会
真っ赤に輝く、正方形の本。ちょうど手に馴染むサイズ感に、心が落ち着く。ぱらぱらといつまでも捲っていたくなる装丁。
広島県で、子供たちにご飯を作り、食べさせていらっしゃる中本忠子さんと、彼女が中心となって生まれたNPO法人、「食べて語ろう会」の、言葉とレシピが編まれている。
実は、ブース前でページを捲り、泣きそうになってしまっていた。
家に帰って読み、本格的に泣いた。
湯気や匂いまでも伝わってきそうな、「ばっちゃん」こと中本忠子さんの温かい手料理のお写真と、レシピ、ご飯にまつわる言葉たち。
ああ、同じグラム数食べたとしても、ばっちゃんのお結びと、コンビニのパンじゃあ、心の満たされ方が違うんだよなあ。
「食べる」ことを蔑ろにすることで、悲しい事件の芽が出てしまう。きちんと、「食べるものを食べる」ことで、その芽を摘むことができる。ばっちゃんの信念は、とてもシンプルで、実用的だ。
そういえば、最近食べることを蔑ろにしていたなあ。きちんと食べることは、自分を大切にして、一生懸命生きることなんだなあ。
ばっちゃんの親子丼、作ってみようかな。
(2)本屋夜話「小鳥書房文学賞」詞華集
小鳥書房様が主催する文学賞の、受賞作品集。
これがもう、読んでいると、宝石箱を覗くような感覚に。一気読みすることがもったいないと感じた作品集、いつぶりだろう。星のない夜に、明かりを灯してくれるような、優しく強い作品たちが集う。
誤解を恐れずに言えば、私は、一読者として、「形式だけが整っていて、綺麗な設定と綺麗なオチだけしかない作品」が苦手である。別の言い方をすれば、「著者の人生から得られた、血の通った作品」を愛している。
実際に手に取って読んでいただきたいので、内容に関する詳しい記述は避けるが、高山ウエユ様の「夜明けのコーラス」という作品が、とても好きだ。透明感のある描写、決して完璧ではない人生、そして最後に残された希望と、愛。
泣いた。またしても。
売れる本、売れる作品って、何だろう。
思いを伝えるために、大衆性はもちろん必要だ。けれど、「売れるために」というフィルターの目からこぼれ落ちてしまっている、「本当に読みたかった作品」が、きっと存在する。小鳥書房様は、そんな作品を、掬いあげてくださっている。そう思う。
最後に、この作品集、全応募作品のタイトルを収録しているのである。作者にとっては、飛び上がるほど嬉しい、粋な計らいだろう。
次回開催時には、腕を上げて、是非挑戦させていただきたい。
ふあ~、良作に出会えて、お腹がいっぱいである。
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