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とある小説を短歌に翻訳して、小説に逆翻訳して、また短歌に翻訳してを繰り返す #逆翻訳ハヤブサ ロングフォーム

ことの発端

 このような記事を投稿した。要は「私たち以外の誰かも、ハヤブサやってみませんか」ということを発信したのだ。

 するとあれよあれよと「一緒にやりたい」という方が集まり、かようなこととなった。

 こんなスタートが、2022年5月のこと。そしてやがて時は経ち、現在2023年、長き時を経て完成した「ハヤブサロングフォーム」。
 偶然インプロがご縁の方たちが揃ったのでインプロのフォーマットの名前からロングフォームという単語を拝借しました(元の意味とちょっと違う使い方をしているのですがご容赦ください)

ハヤブサの遊び方 #ハヤブサロングフォーム ver

① ものずきがたくさんあつまる
② ひとりめが小説をえらび小説→短歌に翻訳
③ ふたりめがひとりめの短歌だけみて短歌→小説に逆翻訳
④ さんにんめがふたりめの小説だけみて小説→短歌に逆翻訳
⑤ よにんめがさんにんめの短歌だけみて短歌→小説に逆翻訳
⑥ ごにんめがよにんめの小説だけみて小説→短歌に逆翻訳
⑦ 最後によってたかってできあがりをたのしむ

翻訳リレー!

さっそくハヤブサロングフォームで遊んでみる

① ものずきがたくさん集まる(敬称略)

iwanokurosagi⇒うえぽん⇒立夏⇒みすたぁ⇒宮嶋野乃花
※順番もこれで。

②ひとりめが小説をえらび小説→短歌に翻訳

美しき はりの悪夢の飼い主は
ひげの狩人 景色の裏に

(作・ひとりめ:iwanokurosagi)

 以後のよにんは、直前の作品だけを受け取った状態で翻訳をしていきます。最初の原作小説がなんなのかはもちろん、途中の作品も読むことができません。手掛かりは自分の直前の人の小説または短歌のみ。

※原作小説タイトルは最後に発表します。皆様も是非何が原作か、予想してみてください。

ヘッダー画像がちょっとだけヒントだ!

*

③ ふたりめがひとりめの短歌だけみて短歌→小説に逆翻訳

「……そういうことだ。リチャード、きみが犯人なのだね」

警部の問いかけにリチャードがどんな顔をしていたのかは、舞台裏の暗がりでは窺い知ることが出来なかった。しかし確かに、彼が罪を認めて小さく頷いたことだけは分かった。恐ろしい殺人事件の犯人は、映画監督リチャード・フレインその人だったのだ。

映画はクライマックスに差し掛かったところだった。殺人鬼に追い立てられるヒロインの金切り声が大音量で劇場に響き渡る。映画というのは不思議なものだ。彼女はあんなにも無惨な姿で殺されてしまったというのに、スクリーンの中では美しく活き活きと生きていた。若き女優ナタリーの遺作はナタリーが殺人鬼と戦う映画で、その美しい彼女をフィルムに残した監督のリチャードがナタリーを殺した犯人だということになる。一体これは何の皮肉だろうか。

「それ以上私に近寄らないで!!」

追い詰められたナタリーが息を切らしながら叫ぶ。殺人鬼はその叫びがまるで聞こえていないかのように、ゆっくりとナタリーに向かって歩を進めてゆく。よだれと返り血に汚れた汚いひげ面が一瞬アップになる。しばし無言の間。ややあって殺人鬼は、もはや人ではないような声と共に、右手に握った肉切り包丁を振りかぶった。怯え切ったナタリーは、またひとつ大きな叫び声を上げる。振り下ろされる凶器。しかしナタリーはギリギリのところで身を捩ってその一撃を避けた……。

リチャードはずっと押し黙っていた。スクリーンではナタリーと殺人鬼がもみ合っている。映画はもうすぐ終わり、本来ならばこの後リチャードは監督として舞台挨拶に登壇することになっている。さらに言うならばそこにはナタリーもいるはずだった。しかしもうじき観客たちは、楽しみにしていた舞台挨拶が行われないことに失望し、その理由を聞いて恐怖することとなる。警部はまるで芝居の所作のようにゆっくりとリチャードに近寄ると、優しく手を取って手錠を掛けた。リチャードは全く抵抗しなかった。

死闘の果てに殺人鬼を打ち倒したナタリーは肩で大きく息をつく。疲れ切ったその身体を抱きしめるかのように、柔らかい朝日が彼女を照らす。夜明けだ。血に汚れ、ボロボロに疲れ果てた、しかしこの世のものとは思えないほど美しいナタリーの笑顔、そしてその向こうに広がる空と街の景色で映画は終わる。テーマソングが流れてエンドロールだ。リチャードは警部に促されて裏口へ向かって歩いていた。扉を開ける。映画館の裏の狭い路地に横付けされていた警察の車に押し込められるリチャード。車のドアがバタンと乱暴に閉められる。その背中に、客席からの万雷の拍手は届いただろうか?恐ろしい殺人鬼リチャードは、後部座席で呆けたように口を開いていた。綺麗に整えられたあごひげに、口元から垂れたよだれが光っていた。

(作・ふたりめ:うえぽん)

*

④ さんにんめがふたりめの小説だけみて小説→短歌に逆翻訳

銀幕におのが殺意を映したか喝采を背に警笛は哭く
ぎんまくにおのがさついをうつしたかかっさいをせにけいてきはなく

(作・さんにんめ:立夏)

*

⑤ よにんめがさんにんめの短歌だけみて短歌→小説に逆翻訳

 久しぶりに映画館に入って映画を見ることにした。何を見ようかとスケジュール表を見ていると「BLOODY FIGHT」というタイトルに目がとまった。マイナーな洋画であったが、時間も良かったこともあり見てみることにした。
 映画のあらすじはこうだ。主人公のカインはプロレスラーとしてデビューする。しかし、多くの仲間から殴られたり、たたかれたりするなどしてしごきを受ける。しかし、先輩で団体のスタ-であるダグラスはカインのことを可愛がっていた。そんなある日、主人の同期で親友でもあったレオがおおきな試合の直前に行方不明になる。しかし、カインはレオが試合直前で逃げ出すようなやつではないことを知っていた。そこで、カインは知り合いの記者などと協力し、調査を進める。そして、一つの真実にたどり着く。ダグラスは複数の選手に対し実践形式の練習と称して過度な破壊攻撃を行っていた。さらに、それで選手が死ぬようなことがあれば、その死体を知り合いの水族館へもって行き、サメの餌にして、証拠を隠滅していた。そして、レオもその餌食になったというのだ。これを聞いたカインたちは警察にこのことを話すが、警察は信じてくれない。カインは怒りに駆られ、逆にダグラスを殺したいという衝動に駆られる。そして、カインも“実戦形式の練習”に呼ばれることとなる。カインはダグラスの攻撃という名の暴力に対し、小さな身体で、ダグラスを殺しにかかる。そして、文字通りの死闘の末にカインはダグラスを殺す。といった内容であった。
 私はこの映画を見て、あることを思いだした。私が所属している団体の同期・荒山強のことである。彼は、団体の若手スターで近くタイトルに挑戦する予定の選手だ。しかし、荒山もダグラスと似たような”実戦形式の練習”をした。それに、俺がやられた。パイプ椅子で俺を両膝を潰して、動けなくなったところに骨が粉々になるほどの滅多うちを食らったのである。幸い、私は鮫の餌にはならず、なんとか試合が出来るまで回復した。しかし、自分でも事件前とは別人に感じるほど動きが落ちてしまい、試合に負け続け、解雇寸前にまで追い込まれた。しかも、この出来事は単なる練習中の事故として扱われていた。
 映画館から出た後、電話があった。次の試合の対戦相手が変わったというのだ。なん、相手は荒山であった。荒山との対戦予定の選手が急に体調不良になったので、急遽代役になったというのだ。俺の決意は固まった。

恐らく、お客も、他の関係者も、荒山でさえも俺は、荒山を俺は単なる噛ませ犬だと思っていたろう。しかし、俺はあの試合犬は犬でも隙あらば、相手をかみ殺す野犬の心持ちでリングに臨んだ。そして、荒山を叩き潰す勢いで試合を進めた。しかし、これに触発されたのかあろうことか荒山は試合であることを忘れ、俺を滅多打ちにした。
俺はあの強烈な攻撃に再び耐えることは出来なかった。俺は、気を失った。そのまま、俺は死んでしまったらしい。
 ただ、荒山も無事では済まなかったらしい。
 過剰攻撃でないかと捜査の目が入ったうえに、”実戦形式の練習”の件にもメスが入ったという。もう、リングには立てまい。

 棺の中から俺の葬式を見た。思っていたより多くの弔問客が入っていた。きっと、荒山との死闘に感動した人が大勢いたのだろう。
「ナイスファイトだったよ。祐護!」
そういった声が聞こえるとうれしく感じた。そして、今、俺の身体を乗せた霊柩車がクラクションを鳴らし、火葬場へと向かう。直後、歓声が轟いた。
あの映画を見たことを俺は後悔していない。見ていなかったは、あんな風に送り出されることはなかったから。

(作・よにんめ:みすたぁ)

*

⑥ ごにんめがよにんめの小説だけみて小説→短歌に逆翻訳

夢現 重なる軌跡 デスマッチ
残骸(とも)を踏み越え
燃えろ灯火
ゆめうつつ かさなるきせき ですまっち
ともをふみこえ もえろともしび

(作・ごにんめ:宮嶋野乃花)

*

⑦ 最後によってたかってできあがりをたのしむ

まずは原作発表!

原作は萩原朔太郎「猫街
ジャジャーン! 原作を読んでいただくとハヤブサロングフォームの辿った道筋がまた違った目線で感じられると思います。未読の方はぜひ。

ものずきたちから一言

ひとりめ iwanokurosagiより:
原作探しとても楽しかったです。私の場合、何かの創作の上流に自分がいることってないので、今回のロングフォームはとても贅沢な経験でした。
うえぽんさんの小説はもはや「そうとしか読めない!」ってレベルで翻訳してくれていて、原作小説とは全然違うのに、それに通じる香りもあり、読んでいて不思議な高揚感がありました。
それと、個人的には、「はりの悪夢の」の「はり」は玻璃と針をかけていたのですが(「建物は不安に歪んで、病気のように瘦せ細って来た。」を針に重ねました)、立夏さんのターンで同じ場所に「おのが殺意を」が来て、「おの」が斧と己をかけている感じがして(包丁なので違うんですけど)、オツでした。また、みすたぁさんの作中で犬がでてきたのも猫と対照的でセカンド・オツでした。野々花さんがみすたぁさんの小説から闘志をくみ取って昇華させたところは、これぞ人間の美しい営みだよなと膝をパァンと打ちました。

原作では悪夢の創造主から逃げる人が主人公だったのが、追う人になり、復讐者になり、最後の短歌ではライバルになっているのが、着実にシンカしている感じで面白かったです。一方で創造主のパワーがしっかり最後まで残っているのもグッと来ますね。
皆様遊んでいただきありがとうございました。待っている間も楽しかったです。立夏さん、巻き込まれてくれてありがとうございました。おんぶに抱っこですみません。
サンキュー・ハヤブサ。

ひとりめ:iwanokurosagiより

ふたりめ うえぽんより:
人の書いたものから自分の書いたものがまた人に繋がっていくのはとても不思議で、とても楽しい体験でした。
個人的には『はり』の解釈がとても迷ったところで、針?梁?と悩む中、浮かんできた劇場の梁のイメージからぶわっと膨らませて書きました。

ふたりめ:うえぽんより

さんにんめ 立夏より:
 いつもは二人か三人で、原作小説→短歌翻訳→逆翻訳小説の1ターンで終わりのハヤブサ。たくさんの人でリレーにして、何度も何度も翻訳を繰り返したらどうなるんだろう? と思い立ちました。最初のお題になる原作小説を知らない人が複数人いないとできない企画。皆様力を貸していただいてありがとうございました。
 結果、どうだったでしょうか。皆様の感想も聞いてみたいです。
 私の感想としては、原作小説のエッセンスが全員にちゃんとあって、アンカーの宮嶋さんの短歌まで残ったのが意外でした。もっと無茶苦茶になるのかと想像していたのですが、皆さんの汲み取り力ですかね。
 夢か現か、散文的な小説の怪しい魅力が最後まで届いたんだなあと。すごいな朔太郎。
 もっと増やすとどうなるんだろう。30人ロングフォームとか。私は能力的に無理なので、どなたか奇特な方、お願いします。

さんにんめ:立夏より

よにんめ みすたぁより:
遅筆のために他の人を待たせて申し訳ないです。
一連の流れを見てなるほどと思いました!
そして、最後のののかさんの短歌は、僕の小説世界を綺麗にまとめてくれてよかった!
また、やりたいな。(次は、短歌の方で)

よにんめ:みすたぁより

ごにんめ 宮嶋野乃花より:
全然違う作品になっているけど、どこか繋がっている感じがするのと
どれもテーマはぶれずに最後まできたように感じました!
それがなんか海や川になげたボトルメールのような
それが届いた高揚感のような
みんな是非1度は体験してみてほしいです。
楽しかったです!素敵な作品作りに関わらせて頂きありがとうございました✨

ごにんめ:宮嶋野乃花より

参加者紹介

 改めてハヤブサロングフォームに参加いただいたものずきたちを紹介します。前回までさん付けにしていたのだけれど、長期間マラソン伴走したメンバーなので、敬称略にしちゃうわよ。なんせわたしたち、ハヤブサ仲間だからね。

ひとりめ:原作小説選んで→短歌
iwanokurosagi(Twitter@iwanokurosagi)
さかのぼって、海になります

ふたりめ:短歌→小説
うえぽん(Twitter@ryujicalweapon)
インプロカンパニーPlatform、うえぽんこと植野龍二です。ピン芸人。
舞台俳優。うどん県出身。ゲームとかアニメとか世界名作劇場とかメンダコとか口琴とかが好きなエロメガネ。自称中野区最強の二の腕フェチ。note作家。 #うえぽんnote #オリニフレテ ご来場ご視聴応援ありがとうございました🦋

さんにんめ:小説→短歌
立夏(Twitter@ritsu1125)
#ビアンカ2023 女主人をしています。演劇をしたてる「#獣の仕業」代表🍞
企画/演出/脚本/俳優/小説/#立夏の短歌/ハヤブサ/獣の仕業のお知らせ→@kmn_chan_bot

よにんめ:短歌→小説
みすたぁ(Twitter@MRBAIN3)
インプロと野球を愛す。 ときどき、クイズと音楽も。

ごにんめ:小説→短歌
宮嶋野乃花(Twitter@mnkweeds)
舞台中心に活動 役者 142cm 猫(ФωФ)/海月/漫画が好き! 【死んだように生きたくはない】 フォロー大歓迎
無言フォロー失礼します。たくさんの人と繋がりたい

ありがとうございました。

 今まで作った逆翻訳小説ハヤブサをマガジンにまとめています。よかったら他作品もご覧ください。気に入っていただけましたら作成者やマガジンのフォローおよびSNSでの拡散、していただけたら嬉しいです。

参加者の皆様へご連絡

  • ご自身の書かれた作品の転載について:

    • ご自身の作品については、他媒体への転載は自由です。特にハヤブサや立夏への事前許可取りは不要です。ハヤブサの名前出す出さないもお任せします。

  • 他の方の書かれた作品の転載について:

    • ご自身以外の作品を他媒体に転載したい場合は、事前に作者ご本人へ許可取りをお願いします。「全作品載せたい」という場合には本記事のリンクを推奨します。

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