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とある日のコンビニで

「髪の毛がピンクになりましたね、可愛いです」
「え、あ、ありがとうございます」
久々にコンビニに行った時、店員さんがかけてくれた言葉。
その時の私はしばらく外に出れなくて3分の2は引きこもり状態だった。コンビニに行ったのはネットで当たったタバコ引換券を交換しに行くため。ついでにストゼロとカップ麺を買おうとコンビニの中をウロウロして、レジにむかった際の言葉だった。
顔はもちろん死んでいた。鬱がだいぶ酷くてほぼ寝たきりの私に外はあまりにも眩しすぎた。お風呂にも入れていなかった。冬なのに何故か汗ばんでいた。やはり外が眩しすぎたのか。追い越される自転車に乗った人々は私よりもうんと幸せそうに日曜日を満喫しているように見えた。
コンビニの中は暖かくて、それでも私の手の震えだったり吐き気だったり何かを家に忘れたような喪失感は凝り固まっていた。おかげで自分の手と足先だけがよく冷えているのが嫌でも伝わる。
その店員さんの顔を見るのは3ヶ月ぶりだった。笑顔が素敵だなとたまに顔を見る度によく思う。私は俯いていたから声をかけられるまで気づかなかった。
だから、久しぶりに他人に声をかけられた事と褒められた嬉しさが相まって思わず口ごもってしまった。本当はもっとニコリと微笑みたかったのに。いや、もっと可愛い時に、お風呂にも入れて表情も生きている時だったら良かったのに、チクリと考えた。
家に帰ってメビウスを吸う。
くらりと目眩がした。なんだか顔が熱かった。
あの店員さんは私のことを覚えていた。滅多に来ない私の、しかもボロボロになった私のことを。
社交辞令でも嬉しかった。世界に置いてけぼりにされていた気分がメビウスの煙とともに吐き出されていく。
なんだか目眩が酷くなってきた。でも私の手足は暖かった。

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