(読書感想文)「それでも、生きてゆく」
坂本裕二著「それでも、生きてゆく」読了。
子供の通う塾が発行する冊子に(国語の学習のところで人の気持ちを類推する的な)お勧め書籍として紹介されていたのが読むキッカケではあったが、いや、これさすがに子供には無理では…。
脚本がそのまま掲載されているような構成で、ところどころ「…」とか、「え、、」とかが多用されており、元々ドラマのオリジナル脚本ではあったようなので、キャストを確認してその俳優さんたちを脳裏に浮かべながら読み進めた。
被害者の家族と加害者の家族。
東野圭吾著「手紙」も少し彷彿とさせる。
7 歳の娘が被害にあう、その母の思い、加害者の家族としての思い、想像するだけで苦しく、苦しさに壊れていく姿に重ねてしんどくなる。
痛ましい事件は現実にも起きている。
娘を 1 人でトイレに行かせたことで取り返しのつかないことになった事件など、恐怖で打ち震え、非日常のケースを想定しての危機感と、とはいえ日常を過ごしていかないといけない、その狭間で葛藤がある。
仕事と家事と育児で疲れ切って「もう 1 人で行ってきてよ。」と思いたい自分と、
「この 1 回で取り返しのつかない事件が起きたらどうすんだ」という恐怖、
成長した子の「1 人で行けるから」という自立心が故の気持ちと、
どうやって折り合いをつけたら良いのか。
事件から守ることが最優先なんだから、家事なんて適当でいいし、仕事で見れないんだったら辞めちゃいなよ(優先度を履き違えるな)、という想いと、
いやいや、仕事しないと先立つお金も余裕がなくなるし、家事も日々の積み重ねで長期的な健康に起因するし、心配ばかりしてて巣立った後に自分の人生が空っぽになりやしないか、という想い。
そして自分の子が加害者になりうるのかという恐怖。
作品に出てくる加害者の親の姿がとにかく重く辛かった。
現実も、昨今、闇バイトなどによる強盗や犯罪は後を絶たず、サイコパスや、女児を狙う憎き犯罪者も含め、世の中には悪人がいる。
道で出会う赤ちゃんはこんなに純粋無垢で、誰もが生まれつきの悪人ではないはずなのに、どこで道を違えるのだろう。
どうやったらそこから逃れられるのだろう。
愛する我が子が万が一…と思うとそれだけで居ても立っても居られないくらいの落ち着かない気持ちになる。
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非日常を常に想定して日常を過ごすには私たちの人生はあまりに長いし、
起こった時間の傷を癒やし立ち直るにはあまりに短い。
病気の話をするだけで「フラフラして気分が悪くなるからもうやめて」という娘には、どんなに国語力が上がると言われても、このドラマと著作は見せられないかもしれない。
子を持つ親の気持ちを想像するにはまだ幼く、感情の機微が激しくて重すぎる気がする。
クラバートと同様、一旦私の引き出しにしまっておこう。
いつか機会が来たら取り出せる準備をしながら。