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2020年5月の記事一覧
モノローグでモノクロームな世界
第十部 第四章
五、
僕達のこの行為が正しかったのか、それともナインヘルツのように、人々に嘘をついてでも綺麗な世界のまま、留めることが正しかったのか。
あのシステムを止めた今も、その判断はつかないままだ。
無論、人々を助けたい、そう思い行った行為だった。だが、その後の世界がどうなるのかなど、今の時点で誰にも分からない。だから、それが間違っていた行為ならば、罰せられなければならないし、その覚悟は
モノローグでモノクロームな世界
第十部 第四章
四、
陶器のようにきめ細やかな肌。
気持ちよさそうに眠る表情を浮かべるその顔。
絶えず不快な振動音を発生させている羽根の存在が無ければ、きっと何時間でも、それらを見つめていられた事だろう。
背から生えた薄い羽根は硝子細工のように繊細だった。
二匹の蜂が入った、透明なケースの前には、電子パネルがついており、ケイが片手を翳すと、パスワードを入力する画面が現れた。
彼はそこに、神代真
モノローグでモノクロームな世界
第十部 第四章
三、
「マトビ、ケイが最後に話した事、覚えている?」
「あぁ。」
エレベーターに乗り込む直前、彼はTheBeeを破壊する暗号をその手にしっかり握ると彼に告げた。
『それでも僕は貴方が創ったこの歪な世界を愛していました。
貴方にとって、ここは復讐のために築いた未完成な世界だったかもしれない。
でも、この世界だったからこそ、出会えた人が居て、この世界だったからこそ、沢山の事を学べたよ
モノローグでモノクロームな世界
第十部 第四章
二、
「それであんたは永らく、ワームという反ナインヘルツの組織を率いながら、裏でこっそりナインヘルツを動かしていたっていうのか?」
「自分でも矛盾した行為なのは、君に指摘されるまでも無く、嫌という程分かっているつもりだよ。
一つだけ補足をするならば、ワームを実際に率いているのは、私ではなく、リトリであり、彼女に意見をするワームの人々全員だよ。
それにナインヘルツに関しても、私
モノローグでモノクロームな世界
第十部 第四章
一、
「神代真飛、久しぶりだな。」
「・・・・・・君は、確か副島博士の孫か。」
「よく覚えていたな。それにしても、あんた、あれから全く変わってないな。気味が悪いくらいだ。」
「私は年が取れないんだ。」
「そりゃあ、こんな地下深くにいれば、どんな人間だってそうなるだろうよ。」
副島は、そう言いながら彼の隠れ家をぐるりと見回した。
真っ白な壁に真っ白な家具。窓も無い部屋は一面、白く