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自分を変える?

その頃私は行き詰まっていた。

仕事も恋愛も、やることなすこと尽くうまくいかなかった。

お金もなくて、彼氏もいなくて、将来の展望もないまま、安い時給のバイトをして、自分よりずっと若い子たちとその場限りのバカな話をして、一日が終わった。

同級生や友人が結婚したとか子供が生まれたとかよく聞いたのも、別れた男が出世したと共通の知人から聞いたのもこの頃だった。


人生がうまくいかない時、人は、過去を振り返るのではないか。

私はそうだった。

そうして、自分の幼少時のこと、家庭環境のこと、母親のこと、いろんなことを考えては、こうだったらよかったのにと思ったり、自分の選択を悔やんだりした。

うまくいってる時には過去を考えたりしないのだから、ずるいと言えば言えるのだろう。

人生のうまくいかない理由を、生まれ育った環境や親のせいにすること。

そのずるさみたいなものは感じつつも、でも、人生がこれだけ行き詰まっている私、生きづらい私にとって、向き合うべき、きちんと考えなければならないことは、やはり、幼少時からの親との関係であったり、親に対する感情をうまく処理することのように思われた。

そうして私は、心理学の本を読みあさった。

いろんなことを学んだけれど、ひとつ、大きな衝撃だったこと。

それは本に書かれていた、臨床用のひとつの心理テストで、イラストをみて、自由にお話を考えてみましょう、というものだった。

小さな女の子が泣いていて、その横には大人の女性。目や鼻は描かれていないそんなイラストからイメージしたストーリーを考えるというもの。

本にある通り、私も考えてみた。何の気負いもなく、ふっと浮かんだままに。

その後ページをめくり、カウンセリングを受けていた女性の作ったお話を読む。それは私のものと似通っていた。

次に挙げられていたのは、カウンセリングなどは受けていない、モニターの女性が作ったお話。カウンセリングを受けていた女性と同世代。

そちらのお話を読んで私は衝撃を受けた。私が作ったものとは似ても似つかなかったから。

「小さな女の子は道に迷って泣いていたが、通りかかった親切なおばさんが助けてくれた。そうして女の子は無事に家に帰る事ができた。お家ではお母さんが、女の子が大好きなハンバーグを作って待っていてくれたのでおいしく食べた」

それは、私には、絶対に絶対に思い付けないお話だった。

あのイラストからこんなあったかいお話なんてありえなかった。

そして思った。

世の中の見え方が、こんなにも違うんだ、と。

カウンセリングを受ける人、過去となかなか折り合いをつけることができない私のような人間と、ごくごく普通に成長してきた人とでは。

そりゃあ、私は生きづらいに決まってる、と。

それから私は、実践的な方法をたくさん試して、自分の、物事のとらえ方や、何かがあった時の考え方とか、そういうのを変えていった。

認知の歪み、を変えていったとも言えるかもしれない。

そうして、健康的な思考の枠組みみたいなものを手に入れて、その後結婚、出産、子育てが、あった。

私は、その枠組みの中で、まあまあうまく、日常生活をこなしていたし、子供も可愛がれたし、心を病んだりすることもなかった。

私は、自分を変えることができた。頑張って、自分の心と向き合ったり、本を読んだり、いろんな方法を試して。

そう思っていた。



でも40代になってくると、いろんなことも重なってきたし、そもそも20代で身に付けた枠組みだけでは通用しなくなってきたのかもしれなかった。

それでも自分をゆっくり省みる余裕すら作れないままに、私は力技でねじ伏せるように、自分のやり方で、ひとつひとつの現実に対処してきた。

そうやってそうやって、多分、自分以外にも周りにいろんな歪みを与えまくってやってきた私が、自分の心を振り返るきっかけとなったのが、好きな男ができたことだった。


私は、その男をきっかけに、自分の人生を、もう一度振り返る。

自分では、当たり前すぎて気付かないくらいの、自分の思考のクセみたいなものだったり、やっぱりまだまだ折り合いをつけきれてはいなかった、過去の出来事の数々を、もう一度、振り返っている。


もう一度、自分にとっての、健康的な思考の枠組みを手に入れるために。

これからの私の人生に必要な、大切な、財産としての。



前回は、私は、自分で本を読みあさって、自分でいろいろ試してみて、手に入れた。

でも、思考のクセ、の中には、生まれつき、魂の質として、そういうクセが染み付いていることもあるようだ、ということに最近気付けてきた。

そしてそれは、いくら本を読んだり、自分と向き合ったり、カウンセリングを受けたり、周りヘの感謝だとか思ったところで、気付くことは難しい、ということにも。

だって、生まれつき、そういうふうに考えちゃいがちな性質なんだもの、そもそもの魂が。

生育環境とか、こうされたとか、あるいは自分との向き合い方が、努力が足りないとか、そういうことではないんだもの。



だからもし、なんか生きづらい、いろいろ試して頑張ってるけど一向にうまくいかない、みたいな人がいたら。

それは、生まれつきの魂の性質、もしかしたら前世とかで怖い思いやイヤな思いをしたことで、魂にそういう思考のクセが付いてしまったのかもしれません。


全ての人が自分の前世を知る必要はないと私は思っているけれど、もし、生きやすくなるために、あなたのこれからの人生にとって必要となるならば、前世を知る機会、何があって魂にそういう思考のクセが付いてしまったのか、それを知る機会がきっと訪れることと思います。


そして機会は最善の時に訪れる。

だから、その機会がすぐに訪れなくても焦らないで。


自分が悪いから、ではない、努力が足りないから、でもない、もっと言えば、誰かが悪かったから、でもない。

ただ、魂の性質な、だけ。

生きづらさの意味。

持って生まれた性質なだけ。

そう思うだけでも、少し心がラクになるかもしれません。


自分を変えること。自分の意思さえあればできるように思われがちだけど、そうではないこと、もある。

その時に、自分を責めたりしなくていいよ、って、私は伝えたいのかもしれません。



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