【比較認知研究】新連載・犬と猫のこころ、始めます!【論文レビュー】
【比較認知研究】新連載・犬と猫のこころ、始めます!【論文レビュー】
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」
私たちの身近に暮らす犬や猫。彼ら彼女らの「こころ」に、心理学はいかに迫っているのでしょうか。
「心理学評論」誌・65巻3号(2022年)特集「伴侶動物のこころを探る」に掲載されたいくつかの論文をご紹介しつつ、犬好き猫好き動物好きの皆様と一緒に「犬と猫のこころ」を学んでいきたいと思います。
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【論文】
黒島妃香 2022 比較認知科学における伴侶動物研究の進展-特集号「伴侶動物のこころを探る」の刊行に寄せて- 心理学評論65(3) pp.267-269.
【本文】
人の認知機能を、他の生物種との比較から研究する科学領域を、「比較認知科学」といい、系統発生的に人類と近い類人猿(チンパンジー、ボノボから、タマリンやマーモセットまで)の認知能力の研究が進められてきました。今日では、対象とする生物種はラットやマウス、鳥類から、魚類(ホンソメワケベラ)にまで広がっています。
ちなみに、ホンソメワケベラの鏡像自己認知研究については、以前に成書をご紹介していました。合わせてご覧ください。
犬の社会的認知機能には、チンパンジーより高い能力分野がある(ヒトによる指差し行動の理解)ことが見出されています。犬のこのような社会的認知能力は、家畜化の過程で獲得されたものと考えられ、犬の家畜化による影響の研究が進められるに至っています。猫についても同様の研究が始められています。
ヒトは、他の生物種を家畜化することで、安定した食料供給を図るだけでなく、労働の一部を担わせたり(使役動物)、地域や家族の一員として共に生きる(伴侶動物)ように図っています。家畜化が犬や猫にどのような影響を与えたか、ヒトとのコミュニケーションや相互理解はどのようになされるのか、これらの理解が進み、伴侶動物と私たちとの共生に資することが期待されます。
(つづく)