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【学生さんとの質疑応答】デイケアで働いていて、大変なこと

【学生さんとの質疑応答】デイケアで働いていて、大変なこと
「デイケアの中のひとが語る、精神科まわりのあれこれ」#95

 とある総合大学で、心理学を学ぶ学生さんに「デイケア」について講義をした体験があります。リアクションペーパーを介した学生さんとの質疑応答のメモがあるので、学生さんとのやりとりを再現してみています。今回はその第4弾、「デイケアで働いていて、大変なこと」についてです。

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【質問】
 デイケアで働いていて、大変なことは何ですか。

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【回答】
 ご質問、ありがとうございます。

 思いつくのは、以下の3点でしょうか。

 第1に、「デイケアが多職種の現場であること」でしょうか。精神科デイケアには、専任の医師のほかに、専従の看護師、作業療法士、精神保健福祉士などが働いています。心理士としての“立ち位置”が曖昧なまま、他職種と密にコミュニケーションしなければならないとしたら(一部の新人心理士さんには、あるかもしれない事情)、その心理士さんにとっては大変でしょうね。でも、他職種のスタッフと付き合うのは、いろいろと教えていただけて、有意義なものですよ。

 第2に、「治療構造の曖昧さ」があげられるでしょうね。面接室や面接時間などに守られた心理相談の枠組みと違って、デイケア治療はもっと柔軟で漠然としています。スタッフ事務室で“レトルトカレー”を温めてかき込んでいる姿や、へっぴり腰で卓球をしている姿などを、患者様に見られてしまったりするのです。でも、大変ではあるけれど、それがデイケア治療の“醍醐味”でもあると思いますよ。人と人とのお付き合いができる、ということですから。

 第3に、「参加(没入)と観察(客観)のバランスが保ちにくい」という点があげられるでしょう。一緒に活動に取り組みながら、アセスメントと介入を瞬時に行うマルチタスクの力量が求められます。私はもともと不器用な人間なので、この点は、最初は苦労しました。でも、慣れるものです。

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【コメント】
 デイケアで働く大変さは、その魅力と表裏一体なのが分かります。

 ずいぶん昔(20年以上前)、宇治おうばく病院の心理士さんが中心となって、精神科デイケアに携わる心理士さんむけの自主シンポジウムが、とある学会で数年にわたって開催されたことがあり、私も何度か参加しました。そこでも、「多職種協働の中で、心理士のアイデンティティを保つ大変さ」が何度か話題になりました。でも、私自身は、そこに悩んだことはないんですよね。そもそも私たちは、いろんな属性の人間に囲まれて生活しつつ、自分であり続けられているのですから。そんな防衛的に構える必要があるのかしら。

(おわり)

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