【精神科病院の不祥事・番外編】カメラの設置より、リアルな人の眼と手を入れよう
【精神科病院の不祥事・番外編】カメラの設置より、リアルな人の眼と手を入れよう
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」
東京都八王子市・滝山病院における暴行・虐待事件や不祥事にまつわることを、連載しています(タイトルに【精神科病院の不祥事】とつけています)。今回は番外編です。
東京都の監査に対する滝山病院の回答に、観察カメラの設置と運用が含まれているようですね。私の中では滝山病院は既に“悪意認定”(個人のまたは組織の”悪意”が根底にあり、単なる偶然や過失ではない)されているので、その前提でお話すれば、観察カメラの設置で暴行事件を防ぐことはできません。悪意と力量を持つ者は、カメラの観察をかいくぐって巧妙に立ち振る舞うことができるのです。以下、私の推測を含めてお話しします。
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観察カメラは、音を拾わない仕様なのではないかと思います(大規模店舗などに複数設置されている防犯カメラのイメージ)。すると、悪意のある人間は、こういうことができるのです。
すると、暴力の根絶(または暴力の証拠保全)のはずの観察カメラが、悪意のある人間のアリバイ作りに加担することにすらなってしまうのです。
もちろん、カメラの設置をしない方がよい(するべきではない)、と主張する意図はありません。どうぞやってください。しかし、それだけでは不十分なのです。
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以前に私は、連載記事の中で、「紹介元病院が、紹介先の診療にも一定の責任を持つ診療報酬制度(共同のケースカンファレンスに点数をつけるなど)を提案しました。それは、すでに滝山病院の診療に係るロジックそのもの(例えば、患者は力で支配するものなのだ、という信念など)を信頼することができず、外部の“まともな”医療者の眼を導入しないといけない、という私の見解に基づくものです。
報道によれば、滝山病院が設置する「虐待防止委員会」に、東精協会長の平川先生が加わるようです。そこで提案なのですが、「滝山病院の教訓を、東精協会員全病院に継承する」という名目で、東精協会員全病院の職員を交代で、滝山病院に巡回させたらどうでしょう。
できれば、会員病院のスタッフを、医療支援の名目で職員として派遣し、滝山病院のスタッフとともに働くようにしたらいいですね。東日本大震災発災後には、被災地の医療機関にそのような医療支援がなされたはずですし、コロナ禍の初期にクラスターを出してしまった病院にも、(状況把握を含め)職員を派遣し医療支援をしたはずです。
「滝山病院」事件は、いわば“災害級”の大問題です。皆で対処し、適正な精神科医療を取り戻していきましょう。観察カメラよりも、リアルな人の眼、人の手を入れることが大切だと感じますね。できれば24時間、365日。他人の眼があるところでは、”悪意”のある人間も、”悪事”を働きにくいのです。
この問題は、引き続き連載記事にて取り上げていきます。よろしければご覧ください。
(おわり)