患者様が私に言った「ずるい!」は、非難ではなく羨望だった
患者様が私に言った「ずるい!」は、非難ではなく羨望だった
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」
病院在職中に関わりのあった患者様で、私の言動に対して口癖のように「ずるい!」を連発する若い女性の方がいらっしゃいました。
「ずるい」という表現は、普段使いのニュアンスでは「不当な方法で利益を得ること」を指しますが、彼女の言い方は明らかに、(不当であることに対する)非難ではなく(得られた利益への)羨望でした。
「ずるい」という言葉の語源には諸説あるようですが、そのひとつに「ず・ゆるし」(禁忌の「ず」と、それが緩んでいる、が合わさった語)からきている、という説があるそうです。禁忌が緩んで「ルールを無視した、何でもあり」ということは非難の対象になるのでしょうが、「タブーがなく自由な」ということであれば羨望の対象になり得ますね。
この患者様には摂食障害の症状があり、心身ともに“とらわれた”生活を余儀なくされていたのです。そんな彼女が、「やりたいことが自由にできる」私に羨望を抱き「ずるいです」というのも理解できようというものです。
クライエント様と私自身の言葉遣いには、繊細でありたいものですね。
※クオッカ:小型のワラビー。日本では現在、埼玉県こども動物自然公園だけで飼育されている。私のnoteページのアイコンは、クオッカのパペット(ミロという名前)です。
(おわり)