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【精神科病院の不祥事・その11】不穏・攻撃性に対応するための「包括的暴力防止プログラム」(CVPPP)
【精神科病院の不祥事・その11】不穏・攻撃性に対応するための「包括的暴力防止プログラム」(CVPPP)
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」
東京都八王子市・滝山病院における暴行・虐待事件や不祥事にまつわることを、連載しています(タイトルに【精神科病院の不祥事】とつけています)。
患者様の不穏・脱抑制・攻撃性に、医療的にきちんと(向精神薬の多剤多量処方による過鎮静や、安易な行動制限などに頼り切らない)対応する方法として、トラウマインフォームド・ケアの導入と、共同意思決定(SDM)の徹底について触れましたが、今回は、書き残していた「包括的暴力防止プログラム」についてご説明したいと思います。
医療者が患者様の暴力に適切に対応する力量を伸ばすことにより、精神科医療における患者様への不適切な対応が少しでも減るよう願っています。
9.包括的暴力防止プログラム(CVPPP)
前回と今回の記事にために参照している精神科救急医療ガイドラインの該当箇所には、包括的暴力防止プログラム(CVPPP)という言葉は記されていませんが、ガイドラインの内容からCVPPPに触れていることが明白で、かつ引用文献にも含まれているので、ここでご説明することにします。
CVPPPは、文字通り医療における暴力を防ぐための包括的な取り組みとして構成された枠組み・技法です。
患者様による暴力は、理由なく起こるわけではなく、そのリスクを適切にアセスメントすることが大切です。その上で、暴力が起こりそうな状況で、不穏をエスカレートさせないよう穏やかで丁寧な対応により対処を図ります(ディエスカレーションという)。患者様の不穏に向かい合う時には、できるだけ複数人で対応し、暴力を避けえない場合には、速やかに危険な状況から離脱するとともに、患者様と医療者の安全を保ちつつ不穏な患者様の行動を制します。
言葉で説明するのは簡単なのですが、緊迫した状況において、チームワークよく落ち着いて対応できるためには、技術(ディエスカレーションのための会話・交渉や、ブレイクアウェイのための手技など)を身につけ実践できるよう準備しておかなくてはなりません。
10.医療機関全体での主体的かつ積極的な取り組みが求められる
繰り返しになりますが、トラウマインフォームド・ケアや共同意思決定、CVPPPなどは、その考え方や方法論などを医療者が確かに身につけ、実践できるよう準備しておくことが求められます。
精神科病院では、行動制限最小化のための取り組みが求められています(行政による監査の指導内容に含まれている)。例えば、かつて私が在職していた精神科病院では、新入職員研修と、年2回の行動制限最小化研修により、CVPPPについて全職員が学ぶ機会を継続的に設けていました。医療の現場で患者様の暴力に晒される機会が多いのは看護職なのですが、非・看護職の私でも、患者様の不穏に立ち会うことがあり、研修で学んだ方法・手技を活用し場を収めたことが何度もあります。
患者様の不穏を暴力にエスカレートさせないこと、患者様の不穏に対して医療者が暴力的方法で対応しないことに向け、医療機関や医療者の取り組みが求められます。非・医師、非・看護職にとっても、他人事ではないのです。
(おわり)