九月一日
「あんた、今日から学校よ。早く起きなさい」
そういって、私の布団を引っぺがす
九月一日
都内の小・中学校は新学期の始まり
どれだけ憂鬱なことか
いつもは5-10分ほどで布団から何とか出ることはできるが、今日は長くなりそうだ
「無理だよー、このぬくぬくの環境から一歩でも飛び出したら死んじゃうー」
「そんなこと言ってないで早く起きなさいよー
あんたの友達が待ってるんだから」
そうなんだよ
学校には休み期間中あっていなかった友達に会える
思い出話もたくさん話したいし、聞きたい
でも、この生活に慣れてしまったせいで抜け出せない
このジレンマ
最悪すぎる
「早くーーー、いっくよーーーーーーー」
そんな声が外から聞こえてきた
「この声は!!」
そうやって、声を出したときにはもうすでに立ち上がっていた
やっぱり友達の力は絶大だ
その一声で私の心が躍る
「ほら、早くしなさい」
先ほどとは違って柔らかい声で母さんが言った
「はーい」
夏休みでなまりきったからだが悲鳴を上げるレベルで支度をする
それでも、行くぜ行くぜと心が先行する
「行ってきます!!」
「気を付けてね、行ってらっしゃい」
この問答が一年の中で一番輝くのがこのひなのだ
九月一日
世間一般では、あまりいいイメージを持っている人はいないかもしれない
小・中学生が学校に行くことができずに、欠席、転校、自殺を図る日
でも、それと同時にみんなの目がキラキラと輝く日でもある
登校したとき、あっていなかったワイワイとみんなが話しているあの空気感
正直、ワクワクする
みんなが入ってきた自分に開口一番
「おお、久しぶり」
と声をかけてくれる
この曇りのない言葉に救われる
こんなに素敵な九月一日
そんな日をみんなが笑顔で過ごせる日をいつの日か夢見ている
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