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ソワレに浮かぶ私のドレス 創作

「今日のコンサートに来てくれる人の欄に大貴族のマハ侯爵の子息がいるわ。ちゃんと準備しなさいよ!」

真剣なまなざしでそういうのは母であった

私の家族は中流階級の家系で今としての位置も悪くない。うちの家系はそんなに上流階級を目指してないことも周りの家族の生活の仕方でわかる。

ただ、玉の輿できるのであれば、そうしていきたいところだと母の反応からわかる。

マハ侯爵は、先日の夜のパーティーでお会いして、仲良くなった。話も面白く、こちらが中流階級であるにもかかわらず、柔らかい物腰でいてくれてとてもフランクな関係を築けている。

その方が私の公演に来てくれるのだ。

私は、昔から母の指導で演劇をやっていた。母は、ものすごく刺激的で魅力的な演技をするのがうまく、その技量と熱量を間近で見てきたからこそ厳しい指導にもついていこうと思った。

その私の初めての公演がそれであった。

当日、実際にマハ侯爵の子息様が来てくれているのが舞台裏から見えた。

ほんとに来てくれたんだ

うれしくてぼーっとしていると、母が何かを渡してきた

「これを、ドレスの下に着て適当なタイミングでこれになりなさい」

渡してきたのはよれよれの私がよくきているパジャマだった

「は?意味が分かりません。確かに着替えるシーンはありますけど、これでは侯爵の子息様を含む観客を悲しませる可能性があります。」まっとうなこと言ったと思った

「確かに一理あるわね。でもね、このパジャマであなたはどれだけ練習してきたの?リラックスしながらもこの服で練習してきたでしょ。その練習の成果をこの服とともにみせて、あたかもドレスを着ているように見せるの。それが、演者よ」よどみなく、一定の声で言っていた母の姿に私は感激した。

こんなにも、演技だけに忠実になれるひとなんだな

「ありがとうね、母さん」笑顔で返す

「どういたしまして。あなたの瞳は私に似て美しいわ。ま、私ほどじゃないけど。その瞳が輝くのは夜の公演なのよ。だから、あなたの思う演技をめいっぱいしてきなさい」優しくも力強く押し出してくれた。

公演が始まった

演劇自体は、最初悲劇にあっている私がだんだんと周りの力を借りながら成長し、最終的には結婚して喜劇で終わる、といったものであった。

私は正直、ドレスを渡されるものだと思ってたから、最後結ばれるシーンで脱ごうかと思ってたんだけど、そうもいかなくなったわね

そう考えていた

でも、私の演技が始まってからはどうでもよくなった

最初は言葉多めで、動くシーンがすくないが、だんだんとダンスなど激しいシーンが増えてくる

あぁ、もうこの服邪魔ね
もういいや

最初のダンスのシーン
物語的には何もないシーンで私は脱いでしまった

でも、どうでもよかった
これしきの事で帰る人はそれまで
私の演技をみなさい

強く思い、それを私の体全体で表現した
後で、聞いた話なのだが、私の演技がパジャマになってから、よくなっていく様子に皆ほれぼれした様子だったという。

最後のシーン
額に一粒の汗を流し
呼吸が荒いのを何とか抑えて
「私と結婚してくれてありがとう!!」

その曇りのない純粋な瞳は会場を包み込んだ


その後

「なんか夜にしかやらないすごい公演があるらしいぜ、なんでも明らかに普段着の格好でショーをするんだとか。あと、演者はあのマハ侯爵の子息様の婚約者らしいぜ」

「まじか!今度行ってみよう。なんて名前の公演なんだ?」

「ソワレに浮かぶ私の瞳」


いかがでしたでしょうか?
もしにお気に召されましたら、ほかの公演もぜひ読んでみてください
それではまた、ソワレでお会いしましょう


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