FFXIV6.0のデノミを自分がやるとしたら……?

バランス調整を仕事でやっているので、FFXIVのデノミを自分でやった場合を検討して、ケーススタディとして自分の仕事に活かそうと思った。のでデノミのやり方を検討してみる。

◆免責
 以下は今ざっくりと検討しただけだから色々知らないシステムや考慮漏れがあると思うし、実際にFFXIVチームはもっと効率的なやり方でやっていると思っているので、実務等の参考にしないことをおすすめします。

 本職の人は自分のプロジェクトのバランス調整の参考にして怒られが発生しても責任取らないからね!

◆思いつく手順
・前提:
 基準は接触時間とダメージ/回復の比率だと思われる。

 接触時間とは、コンテンツ自体のプレイ時間のこと。接触時間が変わらなければ週課などのプレイ時間の前提が崩れず、敵の硬さが変わらないため体感が変わりにくい。接触時間はFFXIVでも前提とされている節があって、例えばフェイスでプレイした時、大体どのIDも30分でクリアできるように調整されている。
 
 おそらくダンジョンのILなんかも接触時間からの逆算で調整されているはず。なのでまずは接触時間が変動しないことを基準とする。これをなぜKPIと置くかは割愛。

 ダメージと回復の比率は、1回の攻撃につき、どれぐらいHPが減るか、1回の回復でHPがどれぐらい回復するかの比率である。
 どの攻撃何回でor被ダメスタックいくつでプレイヤーが致死になるかを計算してあるはず。例えば散開攻撃はこれが0.5~1.xになっていて、こうすることで重ねるとバリア貼っても確実に死ぬのか、1枚なら重ねても平気なのか、1枚重ねても軽減すれば平気なのかが決められるはず。

 これによってプレイヤーステータスに依存しないコンテンツ難易度の指定ができる。プレイヤーステータスへの依存度はおそらく~%という基準があって、例えば不屈理論全振りと0(実際は多分プレイできるILの最低値)だとこの耐えられる回数が変動するように設計されているはず。

 で、ダメージ・回復の比率を変えないようにする理由は、見た目の体感が変わらないようにするのと、回復回数、軽減回数が変わらないようにするため。

 例えば以前であればHPの60%を持っていった攻撃が1回の生命活性で戻ったとする。デノミ後にこれが80%持っていくようになり、戻しが活性1回、フィジク1回になったとすると、ヒーラーとタンクの負担が1GCD分増えることになる。なのでこれを変えないようにする。実際はWS/アビリティベースではなくHPベースの方がスキルごとに検討する必要がなくなるので、HPに対するダメージ量、HP回復量でまずは試算するはず。

という前提の上で、以下を進めていく。

・手順1:戦闘に関わる確率や固定値、直接ダメージ以外の値を1/xする。
 中学数学の考え方なのだけど、等式の性質から全ての値に対して同じ値を掛けたり割ったりすれば、等式の関係は変わらない。なので、確率や割合、HPを1にするギミックなどの固定値計算を除く計算式や敵のパラメ―タ、装備パラメータを含めた戦闘に関わる値を適切な桁数(例えばLv90であれば20000以下など)の基準に合うように割ってあげる。

 この基準値は数値のインフレーション計画に則って設定する(自分が設定する場合にはx年運営で最高~%のインフレ率にして最終的には~の値になっているというように設定する。ここらへんはPLの計画を参考に長期間運営しても絶対に超えないように盛って設定する。)

・手順2:変更した際の各レベルや装備でのデータ試算を用意する。
 上記で設定した場合、数式上は変動しなくても体感が変動する可能性がある。論理より体感の方が鋭く優勢の人が多いので、数値上は殆ど変わっていなくても「なんか違うな……」とそれに気づく可能性がある。なので上記で試算した数値を体感レベルの違和感の分解能まで落としていく必要がある。

 そのために、まずは指標と比較するための試算データを用意する。それぞれのコンテンツに対して下限IL(の中でも特に理論値が最も弱い装備)/上限IL、シンク/制限解除、人数/ジョブごとに分けた
 ・コンテンツの総接触時間
 ・1グループの接触時間、ダメージ、被ダメージ、必要回復量
 ・2グループの接触時間、ダメージ、被ダメージ、必要回復量
 ・全まとめの接触時間、ダメージ、被ダメージ、必要回復量
 ・ボスあたりの接触時間、ダメージ、被ダメージ、必要回復量
 を用意する。
人数/ジョブごとは、制限解除のみ試算。シンク時は最弱の仮想構成、最強の仮想構成の試算を用意する。

また、トータルだけでなく各コンテンツの敵の技やジョブごとに用意する。これは前提で紹介したHPに対する比率も試算しておく。

 前者マクロの値はAAも含めた体感の変化を、後者ミクロの値は1攻撃当たりのギミック難易度の変化を見るための用意する。
 (※想定ダメージは各ジョブのそのILでのDPSの理論最低値、中央値をデータから試算しておく。これは普段のコンテンツ調整に使用しているはずなので、計算方法は割愛。)

 ・手順3:上記表を見て以前のものと比較、下限に下駄を履かせる方法を検討する。

 下限でクリアできない状況を潰してしまえば上限はほっといてもクリアできるので、まずは下限の課題をクリアする。下限ILでのそれらに対して、シンクプレイ時は想定の接触時間でクリアできるように敵のステータスを調整する(といっても上記試算で課題が出ることはないはずだが……)

 これでシンクプレイ時のプレイに超える力を付与しなくてもクリアできる状態は担保できる。敵のステータスは下限と上限で変動させることができないものなので、上限プレイ時の情報は修正優先度が低いため参考情報に留める。あまりにも接触時間が短い場合には上限IL装備で得られるステータス値を削って調整する。

 その後、制限解除した際に各ジョブごとに(この基準はHP、ダメージを基準にする。
 例えばタンクであればDPSが足りないはずなのでダメージを底上げする値を決定する。
 DPSであればHPなので各技、トータルともにダメージを基準に自然回復量と最大HPを下回らない値かどうかを確認する。
 人数とジョブに関しては手順2で用意した4人の数値を頭割りしたものを基準にする)、下限ILの問題を潰せるステータスの追加値を人数ごとに用意し、超える力(強)で得られるステータスを設定する。

・手順4:実際にコンテンツをプレイして問題がないかを確認する
 上記で超える力(強)の値を設定したら、実際にプレイして体感的に変化がないかチェックする。これは上記すべてで用意したデータに誤りがないか、見落としている箇所がないかのチェックのためである。(ありがちなのが試算した後にExcelで設定した変数自体が間違っていた、ここを調整していなかったというものである。また、バランス調整自体に問題はなくてもマスタの設定に誤りがある可能性がある。なのでこれを潰すためにチェックする。)

 残り工数が少ない場合には、特に変動が大きい箇所や技で食らうダメージが大きい箇所を優先的にチェック(ミスったらプレイヤーが死んでしまい、クリア不可能になってしまうため優先度が高い)

 一通りチェックが終わったらステージング環境等で下限と上限でプレイしてもらうべく、QAに回す。テスト項目としては(定常でチェックするはずの)マスタ設定に対する比較チェック、試算との照合に加えて、下限と上限、それぞれの人数とジョブでクリアが可能かのテストとなる。確認項目としては機械的にチェックしにくい接触時間のテストも含めておく。後は一撃のダメージなどの上限値下限値も一応チェックしておくと安心(クリティカルなどで跳ねた場合に値がぶっ壊れていないかなど)

といった感じで設計できるのではないだろうか。この辺はジョブバランスとかの更新を加味していない純粋なデノミだけを抽出した作業なので単純化されているけど、スキルの調整も行なった場合にはそれらも加味する必要があります。

なので前提の前に、何が変わって何が変わらないのか、変えてはいけない値はなにかを抽出してまとめておくとミスが無くていいと思います。

上記の手順を踏めば5.x計算式(換算値計算含む)、5.x装備DB、6.x計算式、6.x装備DBがあれば上記デノミの設計はできるはずなので、こういうのが好きな人はやってみるといいかも。


俺?いやプライベートでそんな仕事みたいなことやらないよ……。というより俺は俺でプライベートの時間でも同じようなことやってるから……自分の仕事のだけど。

あと、こういうのを考えて実際にこれらが自動計算されるような表作るの好きな人はゲームのバランス調整向いております。僕は好きなのでやっていますが、好きな方はゲーム業界までお越しください(特段紹介はできないけども)

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