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私の歴史~~武術に憑りつかれた男2

このバスケットボール部は、結構レベルが高く、大会でもいい成績を残していた。しかし、その分練習は厳しかった。
新入部員は30名ほどだったが、2年生になるころには9人になっていた。

まず、練習前にグランド10週ランニング。
一周たしか300Mだったと思うが、10週で3000Mだ。
これを毎回練習のはじめに行う。
これが毎回、苦痛だった。
それから腰を低く落としてのドリブル。
それからゴリラスタンス、片足ジャンプなどのステップワークの練習。
腕立て伏せ、腹筋などの基礎トレーニング。
階段をダッシュで上り下り。
それからチェストパスの練習。
ランニングシュートの練習。

屋外にバスケのコートがあったので、1年生は屋外で上記のような練習をしていた。雨が降ると、廊下で腕立て・腹筋の他にサーキットトレーニング。
これがほんとにきつかった。
私は足が遅いので、なかなか終わらず、ヘロヘロになりながらやっていた。
この雨の日の廊下でのトレーニングを称して「しごき」と言っていた。
少し上級生が下級生をいじめるような雰囲気もあったかもしれない。

あるとき、2年生が廊下に1年生を正座させ、膝の裏にバットを挟ませ、その上を踏んで歩くといった「しごき」があり、だれかが親に言ったらしく、PTAで問題になったこともあった。

私がこの時に興味があったのは、中国武術、合気道、ブルース・リー、プロレス、ピート・ロバーツである。ちなみにピート・ロバーツはイギリスのプロレスラーで、蛇の穴出身の「ランカシャー・レスリング」の使い手である。関節技を得意とし、どんな態勢、どんな状況からでも関節技をかけるという素晴らしい技術の持ち主だった。

それに、なんといってもブルース・リー。
見たこともない、その素晴らしい動きに魅了された。
彼が使う技は「カンフー」と言う。
初めて聞く言葉。
中国武術のことだという。

しかし、彼の動きを見てなんとなく、こっれらの技や動きは、何かを彼なりにアレンジしたものなのだろうなというのはわかった。
彼は何をアレンジしたのか?
「カンフー」「中国武術」・・・・。
何かこれについて調べたいが、その当時はネット検索なんてない。

本屋をめぐって探すことにした。

そこでまず最初に見つけたのが松田隆智著「少林拳入門」と宗 道臣著「少林寺拳法入門」。
中学生で小遣いも少ないので両方は買えない。
「少林寺拳法入門」をパラパラめくってみた。
僧衣を来たお坊さんみたいな人が打ったり蹴ったり、関節技をかけたりしていた。
しかし、その動きのニュアンスが、ブルースリーのイメージと重ならなかった。
「少林拳入門」をさっと目を通した。
表紙には秘宗拳を図解した、流れるような動きのイラストが載っていた。
ページをめくると、少林寺の歴史がくわしく書いてあり、少林拳の主だった門派の紹介、名人達人たちのエピソードも載っていた。それから筆者自身が演武した写真付きで少林羅漢拳の套路の解説と江西少林拳の解説が載っていた。
全てはじめて知るような事ばかりで、迷わず購入していた。
直感的に、これが、この世界がブルース・リーの土台となっているものだと思った。

それから、その本を見ながら少林羅漢拳を自宅で練習していた。
面白い!面白過ぎる!
これが当時の私の感想だ。

それからも、いろいろ本屋を探して歩き、中国武術の本を集めていった。
それから漫画で「空手バカ一代」を読み、空手にも興味を持った。
それもいろいろな独習本などを集めて型をやり、巻き藁を突いたりしていた。

ブルース・リーを見て以来、なぜか現代の武道、武術のルーツを知りたいといった欲求が強くなった。
現代競技空手のルーツは、沖縄空手。
剣道のルーツは剣術。
柔道のルーツは柔術。
それを調べれば調べるほど、現代武道は伝統武術とは全く別物になってしまっていることがわかった。

伝統武術の奥深さは、現代武道の中にはすでに失われていて、ほとんどの人々が顧みることがない。
私は、こういう伝統武術を身に着けたいと思った。

しかし、教えてくれる先生が身近にいない。
したがって、本で独習するしかない。
もちろん、本で学んだ技術などたかが知れている。
使えるはずもない。
だから、大人になったらどこかに習いにいくとして、とりあえず体力づくりだけはしておこうと思った。

だから、バスケ部のしごきにも耐えることができた。

もともと運動神経も鈍く、走るのも遅い。
持久力もない私は、バスケットに向いていない。
そんなことは、よくわかっていた。
それにバスケット・ボールが好きというわけでもない。
でも、今、この時期は将来武術を学ぶために、しっかりとした体をつくっておく時期だとわりきって、ひたすら耐えていた。

ご注意 この物語は過去の私の人生に基づいていますが、フィクションです。ご了承ください。

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