欠点は武器になる
いつもお世話になっています。作家の浜口倫太郎(@rinntarou_hama)です。
昨日ビジネスの逸話っぽいものを紹介させてもらったので、今日も一つ。
同じ状況でも、人によってピンチととらえるかチャンスととらえるかはまったく異なるという有名なお話です。
例えば字が下手という人が二人いて、一方は「俺はなんて字が下手なんだ。恥ずかしい」というコンプレックスを持っている。
でももう一方は、「俺の字は誰にも書けない個性的な字だ」と自信を持っている。
だからポジティブ思考は大事ですよっていう結論のために、この手の逸話が使われるんですが、でもちょっとピンとこなくないですか。
だって靴を履いていない人を見て、「これは靴が売りたい放題だ」って考えるのって普通の発想じゃないじゃないですか。
どっちかというとやばいやつです。
自分が警察官だったら秒で職務質問してますよ。
それよりも靴を履いていないという短所を、うまく見方を変えて長所にしたという話です。そう言われた方が納得感があります。
これってお笑いの世界でもよくあるんです。欠点やコンプレックスを武器に変えると、急に売れたりすることがよくあるんですよ。
お笑い芸人のオードリーは欠点を長所に変えたわかりやすい例です。
今は春日さんがボケで若林さんがツッコミですが、当初は逆でした。春日さんがツッコミで、若林さんがボケです。
ところが春日さんのツッコミが壊滅的に下手。漫才というのはツッコミのうまさが鍵なんです。
ボケの技術が下手で面白いはあるんですが、ツッコミの腕が下手で面白いはまあありません。
オードリーがある番組のオーディションに行った際には、スタッフが気の毒そうに若林さんにこう言ったそうです。
「春日くんのツッコミはポンコツだよ」
正直これってプロ野球でいう戦力外通告みたいなものです。もう漫才師としては無理だよと言っているようなものですから。
若林さんは落胆しつつも、これまでの自分たちのライブを見返したそうです。ぜんぜんウケていない漫才だったそうですが、ある箇所だけウケていました。
それは、春日さんがツッコミを間違えたところです。
ここだけがドカンと笑いを取っていたんですね。正しいツッコミができていないのになぜかそこが笑いになる……そこで若林さんは考えました。
「じゃあこの春日の欠点であるツッコミミスをうまく使って漫才にできないか」
そうして発明されたのが、『ズレ漫才』と呼ばれるシステムです。春日さんにあえてツッコミミスをさせ、若林さんがそれに的確にツッコンで笑いを生むという斬新なシステムです。
まさにお笑い界のコペルニクス的転回です。
欠点を武器に変えて、オードリーはMー1敗者復活戦から準優勝を果たし、売れない芸人から一躍人気芸人となったわけです。
漫才とはニンという自分の個性をどう生かすかというのは以前ここで書きました。
ニンって別に長所だけではないんです。一見短所や欠点に見えてもいいんです。いや、逆に一般的には欠点と呼ばれることの方が多い。
でもお笑いの世界ではそれが光り輝く宝になるんです。世間一般では役立たない能力が、この世界ではもっとも使える武器になる。そこがお笑いの魅力の一つでもあるし、何も持たない若者が芸人を志す理由でもあります。
要はそのニンをどううまく使うかが大事なんです。
今年優勝した錦鯉も、ボケの長谷川さんは五十歳を超えています。これってあきらかな欠点です。何せ若手芸人の中で、とびきりおじさんが一人混じっているんですからね。
でもその五十歳を過ぎているおじさんが、ギャグ漫画のようなバカなボケを徹底する。その手法で短所を長所に変えてしまったんです。
だから欠点やコンプレックスは武器になるんです。それは見方を変えて武器になることもありますし、置き場所を変えることで武器になることもあります。
置き場所を変えるとは転職とかですよね。ジョンレノンがパン屋で働いていたら「いや、おまえパン作らんと音楽作れ」って言いたくなるじゃないですか。まあジョンはパン作るのがうまい可能性もありますが……。
だから「ここが自分はだめなんだよな」とあきらめるのではなく、どう武器に変えるかを考えるのが大事になります。
ためになったねえ(BY もう中学生)