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やりたいことの副作用

いつもお世話になっています。作家の浜口倫太郎(@rinntarou_hama)です。

映画監督であり、小説家であり、劇団を主宰している木下半太さんのインタビュー記事を読んで面白いなという箇所がありました。

元々木下さんは居酒屋でアルバイトをしながら劇団をやっていたんですね。借金も抱えてにっちもさっちもいかない状態のときに、ブログの会社から連絡が来ました。

「あなたのブログ本を出版したい」という依頼です。

そこで木下さんは、「ブログ本は出したくないけど小説を出したい」と言い、その小説がベストセラーになりました。

その本は元々劇団でやっていた芝居を小説にしたものだそうです。タイトルは『赤の他人』です。それを編集者がタイトルを変えて『悪夢のエレベーター』としたそうです。

これはタイトルを変えて正解ですよね。赤の他人では売れなかったんじゃないでしょうか。

この小説を読んでいたので、木下さんの名前を知っていたんですよ。

元来木下さんは、演劇したり小説書いたり映画を作ったりしたくはなかったそうです。直感で動いていたらたまたまそうなっただけとのことです。

インタビューの最後に木下さんが興味深いことを言われていました。

「やりたいことってすごい大事ですけど、本当にやりたかった夢だからそれにこだわったり、譲れなかったりしたことで、作品が面白くなくなったり、売れなかったりする可能性も高い」と。

これって本当にそうだなと思うんですよね。

作家とか芸人の世界でよくあるんですが、売れない人ほど妙なこだわりがあるんですよね。

「あれはできないとか」「それは自分じゃない」とか編集者やスタッフの意見に耳を傾けない人が多い気がするんです。

よく見れば『自分を貫いている』ですが、悪く見れば『頑固で頭が固い』となります。

編集者に聞いていると、できない作家に限って直しを嫌がるそうなんです。

それって作品と自分を同化させているからなんですよね。

一流の作家や芸人ほど編集者やスタッフの意見をきちんと聞いて、さらに面白いものを提供してくれます。

売れてる人って世間が思っている以上に柔軟なんですよね。

じゃあこだわりって何から来てるのかというと、木下さんのいうように『やりたいことだから』というのが根っこにあるような気がします。

「俺は作家になる」「俺は芸人になる」と夢を追うのは素晴らしいことなんですが、反面こだわりが強くなるんですよね。

そういう人って「作家とはこういうものだ」「芸人とはこういうものだ」という固定観念が強いんです。その美学に憧れてその世界に入っているケースが多いので、自然とそうなるんです。

でもそれだと柔軟さが消えてしまいます。

得意なことって他人の方がわかっている場合が多いんですが、耳にこだわりという栓をした人は聞いてくれないんですよね。

特にやりたいこととかはないけど、「あなたこれ向いているんじゃない」とか「これやってみたら」とか周りに言われてやっていたら、成功したという人が結構たくさんいます。

やりたいことというのは情熱を生むんですが、こだわりという副作用を生んでしまうんでしょうね。

やりたいことにこだわりすぎて、せっかく得意で才能あることに目を向けない不幸ってありますよね。

自分も気をつけたいと思います。


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浜口倫太郎 作家
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