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ヒットに上手い下手は関係ない

いつもお世話になっています。作家の浜口倫太郎(@rinntarou_hama)です。

大ヒットする作品の共通点は?


そう問われてなんと答えるでしょうか? 

まず上手さですよね。


やっぱり技術的に優れた作品はヒットする。当然と言えば当然かもしれません。

でもヒットに上手さはほぼ関係ないんです。

作家で考えてみると、デビュー作でいきなりヒットというケースが多いじゃないですか。

デビューでヒットを飛ばして、そのまま人気作家になるというケースがゴロゴロあります。

ハリーポッターの作者のJKローリングもデビュー作がとんでもない大ベストセラーになりましたし、アメリカではハリーポッターの次に売れた作品と言われる『トワイライト』もこれが作者のデビュー作です。

でも冷静に考えてください。ちょっと不思議じゃないですか。デビュー作って見方を変えれば、一番技術的には未熟な作品になります。

プロになって何作か出した後の方が、技術的にはいいものが書けます。文章力、構成力、すべてにおいて後々の作品の方が上です。それだけの力量がついていますからね。

けれど不思議とデビュー作がドカンといくことの方が多いんです。デビュー作のヒットをなかなか超えられないという作家さんは大勢おられますからね。

だからヒットにうまさは関係ないんですよ。

じゃあヒットには何が必要かと問われると、「それは誰にもわかりません」と答えるのが正解です。

何が売れるかなんてプロの作家にも編集者にも誰にもわからないんです。

だってさっき例に挙げた『ハリーポッター』も『トワイライト』も出版エージェントの大半が、「こんなもの売れるわけがない」と軒並み断った作品です。

目利きのエージェントでも、この二作品の大ヒットを誰も予測できなかったんです。

ヒットしたり売れたりしたあとで、「あれはこうこうこういう理由だったからヒットした」とは言えますよ。でもそれって結果ありきで後づけで考えているだけなんですよ。

人間って結果が出ると、そこに理由を求めてしまうんです。

ヒットを出したクリエイター自身も自分が納得できる理屈が欲しいので、後づけで理由をこしらえてしまうんですよね。記憶は嘘をつくっていうやつですね。

正直なクリエイターほど「なぜあれだけヒットしたのかはわかりません」と答えてくれます。

とはいえ戦略と分析でヒットを導き出す例もあります。

「こういうのは売れ筋だ」とか「このジャンルは今流行ってるから」で作品を作ると、運が良ければヒットになるかもしれないです。ただ、大ヒットにはなかなか繋がらないです。

というのも頭で考えると予定調和に終わるからです。

会議の総意で企画を選ぶとろくなことがないのが、結局想定の範囲内で収まっているからなんですよね。

大ヒットは想像を超える何かが必要なんですよね。その何かというのは、専門家ほどわからないんじゃないでしょうか。

とはいえ大ヒット作品を産み出すための法則が一つあります。

とにかく量を作ればいいんです。


結局何があたるかわからないんですから、量で勝負するしかない。衝突回数を増やすのが一番なんです。

ヒットクリエイターに唯一特徴があるとすれば、みんなびっくりするぐらい多作なんですよね。

ヒット作が1割で失敗作が9割でも、みんな失敗作のことなんて覚えていないんです。

ヒット作の方だけが記憶に残っているから、「あの人は凄い」ってなるんですよ。

漫画の神様・手塚治虫先生の作品って、700タイトル以上あります。信じられないぐらいの多作です。

でも700タイトルすべて覚えている人ってほぼいないでしょう。

「鉄腕アトム、ブラックジャック、火の鳥、リボンの騎士、ジャングル大帝、ブッダ、どろろ……えっとあとなんだっけ」

というぐらいが普通の感覚だと思います。ヒット作の記憶が、それ以外の作品の記憶を消してしまうんです。

だからなんだか全部売れているような錯覚を覚えてしまう。

つまり漫画の神様ですらも、何がヒットするかはわからないんです。だから手塚先生は大量に作品を書いて、ヒットの確率を上げたんですよね。

もちろん手塚先生の創作意欲がすさまじかったこともありますが。

だから小説を書いていて、「なんで俺はこんなに下手なんだ」と悩む暇があったら手を動かすのが一番です。

新人賞だと結果が出る前に、一作か二作のストックがある状態がベストです。結果なんかどうでもいい。とにかく量を書こう。これぐらいのスタンスでいるのがいいんです。

新人賞に合格するのは技術よりも、情熱なんですよね。どんなに下手でも情熱のこもった作品は、何か光り輝くものがあるんですよ。

量をこなすエネルギー源が情熱ですから。


ということで僕も仕事の続きをします。




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浜口倫太郎 作家
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